多様なデータを活かして 豊田市都心の現状を考える 豊田市の都心(以下、都心)では、まちづくりの活動が活発に進められています。私達は、この動きに対して何か支援ができることはないかと考えました。そこで思いついたのは、都心において日常的に収集している多様なデータを活用して、都心の現状を分析し、まちづくりを支援することでした。 昨今、証拠に基づく政策立案(EBPM:Evidence Based Policy Making)の重要性が指摘されています。こうした動きも踏まえて、データを活用することに着目しました。 本稿は、次の流れで構成します。まず、都心のまちづくりの現状に簡単にふれた上で、都心で収集されている各種データについて紹介します。そして、各種データを活用した分析から得られた知見と、私達が実施した意識調査による知見も併せて報告します。最後に、今後の展望を示してまとめとします。 都心におけるまちづくりの活動は、近年活発に展開されています。最近の話題でいうと、2016年3月に「都心環境計画」が策定され、2017年10月には「豊田市都心地区空間デザイン基本計画」が公表されました。都心の基盤となる施設や空間整備の計画やその際の空間デザインの考え方が提示され、それらに沿ってまちづくりが進められています。 まちづくりの現場では、2017年11月にKiTARAが開業し、都心の新たな核となる施設が誕生しました。都心環境計画に沿った公共空間の整備や活用も進んでいます。 また、今年の9月にはいよいよ、ラグビーワールドカップ2019が開幕し、豊田市でも日本代表戦を含む4試合が開催されます。都心にも国内外から数多くの来訪者が訪れると期待されます。 こうしたまちづくりの活動やイベント開催による効果を評価し、次の展開での改善につなげることが求められます。 効果を図る指標には、様々なものがあります。都心にある商業施設での商業販売額や来店者数が把握できれば、まちづくり活動等の経済的な効果を評価できます。しかし、都心にある個々の店舗の売上等の全てを常時、継続的に捉えることは容易ではありません。 一方都心では、歩行者通行量、駐車場利用実態、Free Wi-Fiアクセス回数、おいでんバス利用者数などのデータが豊田市などによって収集されています。各データの詳細は割愛しますが、以下に概要を簡単に紹介します。 歩行者通行量は、カメラによる自動計測装置(パロッシー)で年間を通して計測しています。この装置は、まちの活性化を測る装置として国土交通省のガイドライン1)でも紹介されています。 駐車場利用実態は、駐車料金が3~5時間分無料になるフリーパーキングに加盟する駐車場を対象に、利用駐車場ごとの入出庫時間や無料サービスを受けるための認証施設(買い物等の利用施設)の場所などが把握できます。 Free Wi-Fiアクセス回数は、2018年6月より始まった「豊田市Free Wi-Fi」サービスの利用ログのことです。都心だけで20箇所以上設置されたWi-Fiアンテナごとに、サービスを利用するためにアクセスしたアクセス時刻と件数が把握できます。 おいでんバス利用者数は、便ごとの乗降バス停別利用者数等が把握できます。 こうしたデータを利用すれば、来訪者数の実態や時系列的な変化などを捉えることができます。ここに着目し、データを活用して都心の実態を新たな視点から明らかにし、これからのまちづくりを支援することが、私達の狙いです。 また、以上で紹介した数量的な実態だけでなく、都心来訪者の意識についても捉えることが必要と考え、都心来訪者に対する意識調査を実施しました。 以降では、これらデータを活用した分析結果のうち、歩行者通行量、駐車場利用実態から得られた知見を中心に紹介します。なお、紙面の都合上ここに紹介できなかった結果については、今年度まとめる報告書に収録し、当研究所のホームページで公開する予定ですので、ご興味のある方はご覧いただければ幸いです。 歩行者通行量の自動計測装置(パロッシー)が整備された2008年以降の平日における歩行者通行量の変化【図1】からは、全体では歩行者通行量が2013年以降に増加していることがわかります。この変化は、駅や駅周辺のペデストリアンデッキ上の増加によるものであることがわかります。反面、駅周辺の地上の計測点では減少傾向が見られます。 都心全体での面的な歩行者通行量の増加に向けては、駅から周辺へ歩行者を誘導することが求められると言えます。 都心の駐車場では、特にイベントがない平常時でも特定の駐車場で満車となること研究部主席研究員 西堀 泰英特集はじめに都心のまちづくりの現状都心の実態を捉えるデータ歩行者通行量駐車場利用実態
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