公益財団法人 豊田都市交通研究所2019年2月66号多様なデータを活かして豊田市都心の現状を考える特集 拝命した役職のお蔭でこの巻頭言を書くのは十数年になり、時々振り返ってみたくなるものです。5年前に書いた「Passiveの課題対応からActiveな提言へ」は本年度からスタートした当研究所の新中期ビジョンにおいて「市長報告会」という形で実現できたことを大変喜んでいます。4年前には、高齢社会モビリティ対策としてマスメディアでは「運転免許返納&公共交通」一辺倒であったのに比し、現実直視の高齢者運転支援を謳い、ADAS機能限定車両等の提案(2年前の巻頭言)が国の方策として検討されている今日の報道を見て(偶然な一致かもしれないが)静かに祝杯を挙げました。 「今年は」を考える時、昨年度に当研究所が実施した中国に関連する調査で行った日本と比較した国民の自動運転社会についての意識調査の集計結果を思い出しました。その比較によると、お馴染みの高齢者等の移動支援における自動運転の可能性について、両国とも80%以上の回答者は「期待する」としていますが、事故の発生や事故時の責任について「心配していない」と回答する人の割合は中国では30%近くあるのに、日本では10%未満で、その差は20ポイントもありました。E.M.Rogersが書いたイノベーション製品の普及に関する著作によると、2.5%のイノベーターと13.5%の早期採用者が68%もある多数派を牽引し、16%の最後まで受け入れない人を振り切って普及していくという普及プロセスに沿っています。このプロセスに照らすと、中国で積極的な人がより多く、日本で逆により少ないことが分かります。しかし、この差は、世間でいう「リスクを嫌うことが日本の国民性」だからと一言で片付けてしまうのはよいのでしょうか。 我々研究員は、豊田市のシンクタンクとして豊田市らしさを常に心掛けています。自動運転社会の到来は、超高齢社会のモビリティ問題の解決のみならず、自動運転車両によるサービスという交通分野の世紀単位でみるイノベーションを心待ちの心境で迎えるのは「トヨタ」という世界トップ級の自動車メーカーを有する豊田市らしさの表れだと考えます。世界的に自動運転普及の一大阻害要因と挙げられている人々の「受け入れ意識」について、豊田市では、市民が日本社会の平均水準のみならず、かなり積極的な中国国民の水準以上に積極的になって、日本社会並びに世界を牽引していくことは望ましいと思います。TTRIの使命として、自動運転の社会への導入を促進させることを豊田市からというスローガンで励んでいきたいと思います。ラグビーワールドカップ2019をPRする名鉄豊田市駅前広場のイルミネーション 撮影:西堀お知らせ<今後の予定> ●日時:2月20日(水)、4月17日(水)、5月15日(水) いずれも18:00~19:00●会場:「豊田都市交通研究所」(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中 (https://www.ttri.or.jp/machi/machi.html)「まちべん」に参加しませんか自動運転の豊田市での社会導入をめざす(公財)豊田都市交通研究所(TTRI) 研究部・部長兼主幹研究員安藤 良輔
元のページ ../index.html#1