平成30年度研究活動計画研究部部長 安藤 良輔 交通まちづくりに関わる自動運転等の技術革新は加速度的に変化している一方、人口減少や超高齢社会への対応等社会的課題が依然として厳しい状況にあります。そんな中、今年度から5年間にわたり、研究所の戦略的な新中期ビジョンがスタートを切りました。「やるべきことの取組による大胆な研究成果の発信」を指針として、従来の4分野を改め、「暮らしを支える交通」と「都市空間を創造する交通」の二つの方向性に替えて、豊田市や愛知県の社会的課題を強く意識した最重点課題に「交通の安全・安心」と決定して、豊田市をはじめとする地方都市の直面する交通関連政策課題、および将来のあるべき姿を念頭に、豊田市、トヨタ自動車及び関係機関と連携し、自主研究に挑戦していきます。1 調査・研究活動研究の方向性 1.暮らしを支える交通 超高齢社会を背景とした「暮らしを支える交通」は、自家用車と公共的交通サービスの両面からのアプローチが必要です。市への提言をさらに一歩進めることを目指し、以下の研究テーマを中心に取組みます。①高齢運転者の増加を考慮した安全・安心なモビリティ実現を目指した研究:高齢者の自動車運転による正の効果を評価しつつ、負の影響を踏まえて、高齢者の属性、低下した能力に応じた支援システムを提案します。②多様な地域を抱える地方都市における自動運転導入のロードマップ提案:地方都市の中でも多様な地域を抱える豊田市を念頭に置き、自動運転導入過程の道標となる自動運転技術活用のロードマップを第3者の立場から整理し、提案します。③豊田市におけるバス機能を考慮した新たなバス評価指標の提案:民営路線バスを含めた基幹バスの評価手法を取り上げ、次期公共交通評価に反映されることを目指し、バス機能を考慮した新たなバス評価指標を研究して提案します。④地区内道路の課題に関する基礎研究:地区内道路は、安全対策をはじめ維持管理のあり方など、さまざまな課題を抱えています。今年度は、歩行者保護に関する啓発施策と併せて必要なハード対策について研究します。⑤地域バスを対象とした効果的なバス利用促進手法に関する研究:地域バスの利用促進施策を地域自らが行う際の支援を目的に、より効果的な方策の検討に関する研究に取組みます。研究の方向性2.都市空間を創出する交通 中心市街地の再開発や自転車走行空間整備、次世代自動車普及など、豊田市の政策が具現化しつつある中で、新たな課題への対応や政策推進支援に資する成果を目指します。①自転車の走行空間整備過渡期における道路政策のあり方に関する研究:国のガイドラインに沿った自転車利用環境整備計画が進められている過渡期である現在は、利用と空間整備のギャップが生じています。この適性化に向け、利用されない自転車走行空間の構造的・心理的原因を探り、過渡期におけるあり方を考えます。②次世代自動車のCO2排出量算定におけるビッグデータの活用に関する検討:今年度は、ビッグデータを活用して地域の自動車利用特性を反映した自動車CO2排出量算定方法について検討し提案します。③豊田市都心の課題を人の活動と意識から考える研究:にぎわい創出策を考える上で重要な情報となる来訪者回遊状況は、IoT関連技術によるデータ収集方法が整いつつあるため、こうした技術の実用性を検証し、得られた情報を用いてにぎわい創出の課題抽出と対策検討を行います。最重要課題:交通の安全・安心 高齢者による交通事故の対策は喫緊の課題であり、その対策を中心に取組みます。①高齢運転者を対象とした後付け型ADASの多様な効果に関する研究:サポカーの名称でADASの本格的普及までに、比較的安価に搭載可能な後付け型ADASの効果を多面的に検証して、高齢運転者の搭載を促進するための方策を探ります。②交通安全に係るビッグデータを活用するためのデータプラットフォーム構築の試み:政策評価を効率的・効果的に行うのに有用な、様々なビッグデータを統合的に管理するデータプラットフォームの構築を試みます。③豊田市の高齢者の事故特徴を踏まえた事故対策に関する検討:豊田市固有の特徴を明らかにして、効果的な交通事故検討の知見を探ります。 また、上記の自主研究テーマのほかに、各種外部資金を積極的に獲得して研究を展開します。さらに、受託研究も積極的に獲得する研究活動を展開していきます。2 政策提案・研究成果広報関連活動 新中期ビジョンで位置づけられている市長への政策提案説明会や市民への研究所評価結果説明会を新たに実施します。また、初めて国際ワークショップを主催します。加えて、これまで通り、研究成果報告会と「まちべん」の開催および年報と「まちと交通」(本紙)並びに研究成果報告書の発行等を引続き行っていきます。
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