まちと交通 2018年5月 63号
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図4/歩行者保護モデルカー活動の認知状況 図5/歩行者保護モデルカー活動の認知状況と停止行動図6/性年代別にみたモデルカー活動の認知状況図7/モデルカー活動を知った手段に集計したものが【図6】です。サンプル数の少ない性年代があることに留意しなければならないものの、30~50代の女性の認知状況が低いことが見て取れます。また【図7】に示すように、モデルカー活動を知った手段が「職場での告知」が突出して多いことから、事業所に属していない女性への啓発が手薄であることが推察されます。この傾向は平成28年度の調査でも見えており、豊田市では基幹バスにモデルカー活動をPRするラッピングを施したり、平成30年4月から広く市民向けのモデルカー活動啓発ツールとしてステッカーを作成し配布したりしています。 歩行者を見つけても停止しなかった(できなかった)理由についての回答結果が【図8】です。他車との関係で安全に停止できなかったことや、歩行者に気づくのが遅れたこと、歩行者に横断意思があるのか判断できなかったことなどが、比較的「よくある」という回答が多くなっています。このことは、啓発により意識を高めるだけでは限界があり、路側での注意喚起の仕組みや道路交通環境への対策も必要であることを示唆しています。 ところで「歩行者を見たら停止する」ことは、交通ルールとしてどのように捉えられているのでしょうか。他のルールと比較して「悪いこと」と「違反しても仕方ないこと」という2つの項目について、質問しました【図9】。昨今の世相を反映してか「運転中のスマホ操作」が最も「悪いこと」「違反しても仕方ないとは言えないこと」という結果となりました。「歩行者を見たら停止」は、質問したルールの中では「幹線道路での最高速度超過」とほぼ同程度の「悪さ」「仕方なさ」であり、比較的「軽んじられている」ように見て取れます。歩行者保護違反の深刻さを伝える啓発が必要かもしれません。 歩行者として「止まってもらった」経験と、ドライバーとしての停止行動についてクロス集計した結果が【図10】です。止まってもらった経験が多いほど、自分は「必ず止まっている」という回答が多くなる傾向が見られ、一人ひとりの「良い経験」が全体を良い方向に導いていく仕組みが見て取れます。 最後に、どのような状況であれば停止できるようになるか、10点満点で回答してもらった結果を【図11】に示します。やはり「警察の取締り」が最も高い結果でした。注目すべきは「地域の顔見知りによる立哨」が比較的高得点であるということで、効果が期待されます。グラフの右半分は、周囲のクルマが「停止している」状況を段階的にたずねた結果です。これは、マーケティング分野において唱えられる「バンドワゴン効果」すなわち、多くの人が求めるものを選択するという効果と類似した傾向を示していると考えられ、7割ぐらいのクルマが停止している状況になれば警察による取締りと同程度の効果が得られることを示唆しています。 以上の結果から考えられる効果的な啓発活動を以下に列記します。①事業所に属さない層に対する啓発②歩行者として「止まってもらった」ことを経験する機会の創出③歩行者保護違反の深刻さを伝える啓発④顔見知りによる立哨活動で停止を促す ①②③は、免許更新時の講習や高齢者講習の場、交通安全学習センターの活用などが考えられます。④は、交通安全市民運動期間中などに主要交差点で立つ地域住民や事業所従業員による立哨活動を応用し、信号の無い横断歩道付近で歩行者優先を訴えるという方法が考えられます。【謝辞】 本研究の実施にあたり、ご協力頂いた豊田市地域振興部交通安全防犯課に心より感謝いたします。【参考文献】1)「歩行者保護施策評価のための基礎調査業務委託報告書」:豊田市,平成29年3月2)北折充隆,吉田俊和:記述的規範が歩行者の信号無視行動におよぼす影響,社会心理学研究 第16巻 第2号,pp.73-82,2000.3)桑島由芙:消費者間ネットワークと購買行動 -スノッブ効果とバンドワゴン効果-,赤門マネジメントレビュー7巻4号,pp.185-203,2008.どうしたら止まれるのか~ より効果的な啓発手法を探る ~普及が普及を呼ぶ~ より効果的な啓発手法を探る ~おわりに~ 効果的な啓発活動の方向性 ~

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