まちと交通 2018年5月 63号
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図1/歩行者保護モデルカー活動ステッカー0%10%20%30%40%50%60%70%平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度信号の無い横断歩道での停止状況(STOP率調査)十塚町(名鉄高架下)西町(みくさ前)【朝】【夕】【朝】【夕】▲図2/豊田市「STOP率調査」からみた歩行者優先運転の推移    (出典:豊田市交通安全防犯課実施調査データより集計)▲図3/意識上の歩行者優先運転励行の変化歩行者保護運転の徹底を目指して ~ 信号の無い横断歩道での       停止行動意識に関する考察 ~ 歩行者と車両の交通事故は死亡事故となりやすい事故形態であると言えます。そこで豊田市では、そのような事故を減らすことを目的として、平成28年11月から『歩行者保護モデルカー活動』を展開しています。これは市内の事業所に活動を委嘱し、各従業員が「制限速度の遵守」「夜間のハイビーム活用」「横断歩道での歩行者優先」を励行するという取り組みで、業務用車にはモデルカーであることを示すステッカー【図1】が貼付されます。なお、平成30年4月現在で38事業所が参画しています。 当研究所では平成28年度に受託研究として、この取り組みを評価するための調査を実施しました。さらに平成29年度は自主事業として研究を継続しています。今号の特集では、これら調査結果に基づいた考察を記します。 豊田市交通安全防犯課では、信号の無い横断歩道での歩行者優先状況(横断しようとする歩行者がいる時の停止率)の調査を「STOP率調査」と称し定期的に実施しています【図2】。 まず、2つの交差点で、停止率が大きく異なっていることが目に付きます。これは、停止率の高い十塚町では偶に警察による取締りが行われていることや、比較的横断者が多いことなど、さまざまな外的要因の違いによるものであると考えられます。 年度毎の変化を見ると、モデルカー活動が始まった平成28年度以降、十塚町の夕方と西町の朝は停止率が向上しているものの、他は低下しており、活動の効果が明確に現れているとは言えない状況です。 では、ドライバーの歩行者優先運転に対する意識上の変化はあったのでしょうか。平成28年度と29年度の調査結果を比較してみると、約40%だった「歩行者を見かけたら必ず止まっている」という回答の割合が50%強に増加しています【図3】。また、歩行者保護モデルカー活動の認知度も高まっていることがわかります【図4】。 さらに、停止行動と活動の認知度をクロス集計してみると、モデルカー活動を知っている人の方が「停止している」という回答が有意に多くなっています【図5】。これらの結果から、モデルカー活動はドライバーの意識変化に対しては一定の効果があったこと、そして認知が行動につながっていることが見て取れます。 モデルカー活動の認知状況を性年代別止まっていますか?~ STOP率調査結果の考察 ~誰をターゲットとしていくのか~ モデルカー活動の課題 ~1年間で変化はあったのか~ドライバーの歩行者優先意識 ~豊田市の取り組み~ 歩行者保護モデルカー活動 ~研究部次長・主幹研究員 山崎 基浩特集 あなたが歩行者として信号機の無い横断歩道を渡ろうとしているとき、クルマがなかなか止まってくれなかった経験はありませんか。逆に、あなたがクルマを運転しているとき、横断歩道を渡ろうとしている歩行者を見つけたら止まることができていますか。豊田市は「交通事故死“全国ワースト1位”返上を豊田市から!」をスローガンに『歩行者保護モデルカー活動』に取り組んでいます。当研究所ではこの活動の具体的メニューの一つである「横断歩道で歩行者や自転車を見かけたら必ず止まる(歩行者優先)」という歩行者保護運転の促進に着目し、より効果的な啓発手法を探ることを目的とした研究に取り組みました。 ドライバーとしては、止まらなければならないことはわかっていても、道路条件や交通条件から物理的に止まれない場合もあるでしょう。しかし大切なのは、まずはより多くのドライバーが歩行者優先を意識した運転に努めることであると考え、豊田市在住または在勤の18歳以上の方々を対象に実施したWebアンケート調査結果を用いて、ドライバーの意識から豊田市の『歩行者保護モデルカー活動』の効果や課題を確認するとともに、ドライバーの歩行者優先意識を高める方策について考察しました。

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