まちと交通 2017年8月 60号
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図2/2009年3月から2012年3月までの保有率の伸び図3/施策による次世代自動車普及ポテンシャル拡大のイメージ1.0%1.2%1.4%1.6%1.8%2.0%2.2%0.5%1.0%1.5%2.0%2.5%3.0%3.5%HV乗用車保有率の年間伸び(2009.3→2012.3)HV乗用車保有率(2009.3時点)補助無し自治体(n=45)補助有り自治体(n=9)潜在的な次世代自動車購入ポテンシャル施策によるポテンシャルの拡大実施されています。 自治体が今後、次世代自動車普及施策の策定、変更等を行うにあたって、これまで実施してきた施策が効果的だったのか、さらに、どんな要因で次世代自動車が普及するのかを把握をすることは重要です。そこで、本研究では、愛知県内の市町村を対象として、市町村独自に実施してきたHV購入補助金がどのくらい効果があったのか、また、HV普及要因として、どんな都市の属性が影響しているのかを検討しました。 2009年3月から2012年3月に独自の購入補助金を実施した9自治体と、実施していない45自治体で、その期間のHV保有率の伸びについて、差の検定(片側t検定)を行い購入補助金のHV普及効果を分析したところ、補助金が普及に寄与していたとはいえませんでした。さらに、2012年3月のHV保有率を自治体の指標(X軸)として、2009年3月から2012年3月までの保有率の伸びとの関係をみた散布図を【図2】に示します。定性的な分析ですが、この2つには正の相関がみられ、2009年3月のHV普及率が高いと、補助金有無に関わらず普及率の伸びも高いことから、購入すべき購買層がHVを購入していたと推測されました。 また、普及要因となる都市属性としては、世帯年収の影響が大きいことがわかりました。具体的には、小型HV乗用車(5ナンバー車)では、年収700万円以上の世帯割合が多いことが普及要因となっており、普通HV乗用車(3ナンバー車)では、年収1,000万円以上の世帯割合が多いことが普及要因となっていることがわかりました。 次世代自動車大量普及の目標を達成するためには、自動車メーカーが次世代自動車を生産・販売すればよいというものではなく、様々な立場から、次世代自動車が広く受け入れられる環境を作っていく必要があります。今後、行政が限られた予算の中で、効果的に次世代自動車の普及拡大につなげるためには、【図3】に示すように、潜在的に次世代自動車を購入するポテンシャルを持った購買層ではなく、その周辺にいる購買層をターゲットとした施策が必要です。 そのような施策の一例として、米国カリフォルニア州では、補助金支給に世帯年収の条件を設ける施策が実施されるようになりました。一定の世帯年収を下回る世帯には補助金支給額を高く設定し、ターゲット層への購入を促しています。日本において、ターゲット層の属性をどう設定するのかはさらに検討の余地はありますが、今後、普及が進むと考えられるPHVの普及拡大では、補助金支給に世帯年収の条件を設けるといった方法は有効な施策の一つになると考えられます。(参考文献)1)EV・PHV ロードマップ検討会 報告書 2016年3月23日 EV・PHVロードマップ 検討会(事務局:経済産業省)2)一般財団法人自動車検査登録情報協会の 個別統計データを基に筆者作成次世代自動車の普及要因次世代自動車の大量普及に向けて

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