まちと交通 2017年8月 60号
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公益財団法人 豊田都市交通研究所2017年8月60号次世代自動車の大量普及を目指した補助金制度に関する検討特集 昨今、急速にクルマの自動運転技術の開発が進められ、自動運転車導入の機運も高まっている一方で、アナログ的な自転車交通が見直されている。あまり大きく報道されていないが、今年5月に「自転車活用推進法」が施行された。環境負荷の低減、短距離移動や災害時での活用、健康増進といった自転車のメリットや役割の拡大を目指し、自転車専用通行帯(通称、自転車レーン)等の整備、シェアサイクル施設の整備、安全教育など14の施策を重点的に検討・実施することを基本方針としたものである。国が自転車の位置付けを定めた初の法律であり、画期的と言ってよい。実は、わが国の交通に占める自転車分担率(13%:2010年)は以前から高く、自転車大国と言われるオランダやデンマークに次ぐ高さでありながら、こうした自転車政策は欧米諸国よりもかなり後発なのである。 さて、法の基本方針に掲げられた‘自転車レーン’とは、車道に自転車専用の車線を設けるものであり、通常1.5m幅で青の着色等により視覚的に区分される。このような自転車通行空間に関しては、既に2012年11月に国土交通省と警察庁から「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が公表され、各地で既存道路の改良等により整備が進められているところである。さらに、昨年7月のガイドライン改定では、軽車両である自転車は車道通行を基本とすることがより強化され、自転車ネットワーク路線としては暫定的にも歩道を活用しない、つまり自転車歩行者道を用いない方針が打ち出された。 しかしながら、従来、わが国の道路整備においては、車道に自転車通行部分を設けるという概念がほとんどなかったといえる。都市計画道路にしても自転車歩行車道を前提に整備されてきた経緯がある。したがって、既存道路の車道部に自転車レーン等を設けようとしても、自動車の車線を割愛するしかなく、スペース的に無理がある。比較的路肩等が広ければ、そのスペースを利用して改良可能であるが、愛知県内でそのように自転車レーンが設置された路線を調査した結果、いずれもレーンの利用率は半数程度に過ぎない状況であった。自転車レーンのように車道部を車線のみで区分してクルマと共有する場合には、自転車利用者に本当の安心感がなければ利用率は高まらないと考えられる。かつてロンドンでは、強行に狭い車道に自転車を促した結果、自転車そのものの利用が減ったという。これでは、‘自転車活用’とは真逆の結果になってしまう。 わが国で本当に自転車が安全・安心に通行できる空間とはどのようなものか、さらに探求していく必要があるといえる。これまでの道路整備の経緯を踏まえると、自転車歩行者道のストックを十分に活かしていくことも重要であろう。また、同じ自転車でもクロスバイク等の高速車と一般の低速車が混在している現状を考慮すると、自転車歩行者道と車道活用の二段構えが日本的やり方ではないだろうか。そして、自転車の通行ルールの遵守も徹底し、将来的に安全・安心な自動運転社会との共存を図っていく必要がある。自転車の活用と通行空間大同大学 教授 嶋田 喜昭豊田市役所に導入された新型プラグイン・ハイブリッド車(PHV) 撮影:加藤 秀樹お知らせ<今後の予定> ●日時:8月16日(水)、9月13日(水)、10月18日(水) いずれも18:00~19:00●会場:「豊田都市交通研究所」(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中 (http://www.ttri.or.jp/machi/machi.html)「まちべん」に参加しませんか
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