まちと交通 2001年10月 6号
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豊田市の道路交通渋滞の現状と調査・分析の課題主任研究員 図2-1 豊田市の渋滞箇所と類型TTRI Letter No.6 1研究員レポート 11. はじめに 当研究所では、発足当時より一般的に言われる交通課題の一つである「道路交通渋滞対策」に関する業務に取り組んできた。特に平成5年度からはソフト的な渋滞対策であるTDM(Trans-portation Demand Management)施策について、行政とともに豊田都市圏における展開方策の検討を重ねながら3回の社会実験実施に携わり、平成8年度には豊田市都心部事業所(都心部における社会実験参加事業所)に呼びかけ「TDM勉強会」なる組織を立ち上げた。TDM勉強会については「まちと交通 第5号」にて簡単な紹介を掲載したが、これら渋滞対策への一連の取り組みやTDM勉強会の活動に関する報告等は、今後機会があれば、機関誌々面上で紹介していきたいと考えている。 このような渋滞対策への取り組みの中で、昨年度末に市内の渋滞状況調査を実施した。本稿では「現在の豊田市の渋滞状況」は如何なるものであるのか、この調査結果の概要を報告するとともに豊田市の渋滞および渋滞調査・分析の課題について思うところを述べる。2. 豊田市の渋滞(1)豊田市の渋滞の特徴 さて、豊田市の渋滞とは如何様なものであるのか。本年度10月、豊田都市圏は国土交通省から「交通円滑化総合対策実施都市圏」に指定された。また、ここに至るまでにも「豊田都市圏新渋滞対策調査」はじめ「ITSモデル地区実験」等、交通渋滞という現象が背景にあるからこそ実施しうる事業が国、県をも巻き込みながら執り行われてきたこと、さらには冒頭に述べたように当研究所が長年に渡りテーマの一つとして取り組んできたこと、などから「豊田市の渋滞とは余程醜悪なものに違いない」と思われるのではないか。しかし実際には豊田市の渋滞というのは、さほど特殊なものではなく、 ①朝夕短時間の渋滞ピークを持つ ②道路・交差点等における僅かな物理的要因によるなど、どこの地方都市でも見られるような渋滞が主であり、その程度も筆者の経験から言って、近隣の市町と比べてさほど醜悪なものではないように見受けられる。 また、渋滞の背景にあるトリップ特性からは、 ①自動車利用の割合が高い ②自動車利用の短トリップが多いなど、自動車が「下駄履き」感覚で使われていることが指摘されている。しかし、こういった傾向についても、地方都市においては普通に見られる特性であると考えられる。 ただ、大規模な事業所が郊外部に分散して立地しているため、交通量の集中する方向すなわち渋滞の方向が多様であるという特徴はある。例えば下市場交差点などでは、東西方向、南北方向ともに朝夕同程度の渋滞発生が見られる時がある。余談ではあるが、分散型構造の都市では、渋滞対策のターゲット(OD、経路等)を絞ることが難しく、また絞り込んだとしても絶大な効果が期待できるような施策選定が困難であるように思う。(2)渋滞類型と発生箇所 主観的判断に基づく内容を書きすぎたが、本稿は学術論文ではないのでお許し願いたい。とは言うものの私的見解ばかり述べているわけにもいかないので、公式に表明されている「豊田市の渋滞」を紹介する。 まず、図2-1に示したのは豊田市が渋滞対策等のパンフレットに掲載している市内の渋滞類型である。これによると、 ①矢作川を渡る橋梁部の容量不足 ②内外環状線と放射道路の交差部での容量不足 ③自動車関連企業周辺への交通集中 ④路線の容量不足が原因となる渋滞が、図示された箇所で発生していると言われている。
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