まちと交通 2001年10月 6号
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TTRI Letter No.6 19研究員レポート 4地区交通計画 その1主任研究員 橋本 成仁 住宅地における安全で快適な空間の確保は都市整備の基本的な目的として挙げられる。しかし、これらの道路では、死亡事故などの重大事故が頻繁には起こらないことや、幹線道路における安全対策が優先されてきたことなどから、これまで充分な対策が講じられてきたとはいえない状況である。 図1は東京都内の幅員別・道路種類別の交通事故の発生状況を示したものである。これによれば、裏通りとして分類される補助的道路において交通事故が多発し、住宅地内の細街路が含まれる幅員6m以下の生活道路においても事故が多く発生しており、交通安全対策が重要な課題として残されていることがわかる。 また、図2は歩行中に交通事故で死亡した歩行者を年齢別・自宅からの距離別に分類したものである。相対的に自宅周辺で活動する機会が多いことが想像される高齢者、子供に関しては自宅から500m以内で半数が該当することがわかる。また、自宅のすぐそばで(50m以内)において子供の歩行中死亡事故の20%以上が発生しているという事実もこのような生活空間での交通安全対策の必要性を物語っている。 交通事故に対する都市計画側の対応として古典的な方法としては、1928年にスタインとライトによってアメリカ・ニュージャージー州で計画されたラドバーンに代表されるような歩車完全分離方式(図3)や、オランダ・デルフトを起源とし、1970年代から80年代にかけて、ヨーロッパ中で注目されたボンネルフ(図4)に代表される歩車融合の思想など様々なものが考案されてきた。これらについては、住戸の高密化が困難であることや、建設コストが高くなることなどの問題点も指摘されているものの、前者は多摩ニュータウンに代表される初期のニュータウン計画に、後者はコミュニティ道路の原型として街路整備に取り入れられており、わが国の地区交通計画にも大きな影響を与えてきた。図3 歩車完全分離の街路パターン例図4 歩車融合の街路パターン例14000120001000080006000400020000その他広場等13.0m以上5.5m以上3.5m未満生活道路生活道路補助的道路補助的道路準幹線道路準幹線道路幹線道路幹線道路事 故 発図1 幅員別・道路種類別の交通事故件数(資料:警視庁交通年鑑平成12年度版より作成)図2 交通死亡事故の歩行中の年齢別・自宅からの距離(出典:平成9年交通事故統計データ)22.15.37.718.813.38.444.516.828.813.65.912.37.69.121.812.98.038.414.715.730.014.77.217.013.012.625.313.67.326.90%20%40%60%80%100%12歳以下21,967人13~24歳8,392人25~64歳31,979人65歳以上19,413人全歩行者事故(合計)81,751人50m以下2km以下100m以下2kmを超過500m以下調査不能1km以下
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