まちと交通 2001年10月 6号
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TTRI Letter No.6 13研究員レポート 3体験型交通安全教育施設と今後の交通安全教育主任研究員 坂本 利彦研究員 小倉 俊臣主任研究員 鈴木 一宏1. はじめに 我が国の交通事故は、昭和40年代半ばまでは、モータリゼーションの急速な進展に対して道路、交通安全施設(信号機、道路標識等)、関係法令などの社会体制の整備が十分でなかったことから著しい増加を続け、死者数は昭和45年に16,765人にまで至った。このため、昭和45年に「交通安全対策基本法」が制定され、以降5年ごとに「交通安全基本計画」が立案され、国を挙げての交通安全対策が進められてきた。この結果、昭和54年に死者数は8,466人と半減したものの、その後は増加に転じ、平成2年には11,227人となった。「第5次交通安全基本計画」(平成3~7年度)は、死者数を1万人以下とする目標のもとに策定されたが達成には至らなかった。「第6次交通安全基本計画」(平成8~12年度)では、高齢者の交通安全対策の推進、シートベルト着用の徹底、安全かつ円滑な道路交通環境の整備、交通安全教育の推進等の施策が積極的に推進され、平成12年には死者数が9,066人にまで減少した。しかしながら事故件数は増加を続けており、平成13年度からは「第7次交通安全基本計画」による活動が実施されているところである。 この計画の中でも体験型交通安全教育の推進が示されており、本稿では全国の主な交通安全教育施設を紹介するとともに、今後の交通安全教育について考察したい。2. 交通安全教育の状況 平成10年に制定された「交通安全教育指針」では、幼児から成人に至るまでの段階的かつ体系的な交通安全教育及び高齢者、身体障害者等に対する適切な交通安全教育を国、地方公共団体、警察、学校、関係民間団体及び家庭が互いに連携して実施するものとうたわれており、特に参加・体験・実践型の教育の普及を図ることとされている。 この指針を基に交通安全教育が展開されているが、昭和40年代に交通公園が小学生までの教育を目的として整備された他は、免許取得後のドライバーに対する教育は全国規模ではほとんどなされてこなかった。 豊田市の例を引くと、幼稚園・保育園児、小学1年生と4年生に対しては、市役所が交通公園を利用した体験型の交通安全教育を実施している。小学校に対しては、学校からの要請に応じて指導員が各学校へ出向いて行う講話や運動場を使った交通安全教育体験も実施している。一方で、中学生・高校生の交通安全教育は各学校での自主性に任せられたままの状況である。高等学校では三ナイ運動※が展開され二輪車に乗らない方針が出されているが、学校によって事情は異なっており、遠隔地からの通学に必要な場合等、条件によっては免許の取得を認めているところもある。学校を卒業したばかりの若者については、運転免許取得者に対しての啓発活動が主な教育の内容となっている。実技教育は、(財)交通安全協会などの活動をベースとして企業の中で社内教育として行われてはいるものの、運転免許取得後には実際のドライバーが体験型の教育を受ける機会がほとんどないのが実情である。※「三ナイ運動」:(二輪車を)持たない・乗らない・買わない図2-1 中学生通学手段(豊田市内中学校)図2-2 高校生通学手段(豊田市内高等学校)徒歩74.0%徒歩3.7%自転車23.6%自転車67.4%二輪車0.4%公共交通0.6%公共交通24.6%その他1.8%その他3.9%50,00045,00040,00035,00030,00025,00020,00015,00010,0005,00001,000,000900,000800,000700,000600,000500,000400,000300,000200,000100,0000死者数昭和元年 昭和11年 昭和21年 昭和31年 昭和41年 昭和51年 昭和61年 平成8年事故件数死者数事故件数平成12年第6次交通安全基本計画終了平成2年第4次交通安全基本計画終了昭和45年第1次交通安全基本計画開始昭和51年第2次交通安全基本計画終了931,934720,880460,64916,765425,94411,2278,4669,066図1-1 我が国の交通事故件数と死亡者の推移

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