まちと交通 2016年11月 57号
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(注)いずれのレベルにおいても、車両内ドライバーは、いつでもシステムの制御に介入することができる。表1 安全運転支援システム・自動走行システムの定義1)1)高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部:官民ITS構想・ロードマップ2016,2016.5.をもとに作成分 類概 要注(責任関係等)情報提供型ドライバーへの注意喚起等ドライバー責任レベル2:システム複合型加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う状態ドライバー責任※監視義務及びいつでも安全運転できる 態勢レベル3:システムの高度化加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときのみドライバーが対応する状態システム責任(自動走行モード中)※特定の交通環境化での自動走行 (自動走行モード)※監視義務なし (自動走行モード:システム要請前)左記を実現するシステムレベル1:単独型加速・操舵・制動のいずれかの操作をシステムが行う状態ドライバー責任「安全運転支援システム」「準自動走行システム」「自動走行システム」レベル4:完全自動走行加速・操舵・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態システム責任※全ての行程での自動走行「完全自動走行システム」自動制御活用型自動運転の社会への実装に向けて~自動運転に関する現在の取り組みと 普及に向けたいくつかの課題~特集 最近は自動運転関連のニュースをほぼ毎日目にします。専門紙や経済紙だけでなく、より大勢の目に触れるテレビでも頻繁に取り上げられています。そうした報道の多くは、自動車や部品メーカーの業界のビジネスから見た視点や、自動運転技術の可能性や課題などの技術的な視点からのものが多いように感じます。 一方で、私たちが暮らすまちの中に、自動運転の車が実用化されて走り出したら、人々はどのように自動運転を受け止め、まちはどのような姿になるのか、一部の専門家を除いては、広い議論がなされているようには見えません。 こうした状況を鑑み、豊田都市交通研究所(以下、弊研究所と言います)でも、平成28年度から自動運転をテーマとした研究に取り組み始めました。弊研究所の自動運転についての研究は緒に就いたばかりですが、ここでは、自動運転の現状を簡単にご紹介しつつ、これまでに得られた知見を踏まえ、都市交通の観点から見た自動運転の社会への実装に向けた課題をご紹介したいと思います。 なお、政府や自治体では、自動運転のことを「自動走行」と表記していますが、本稿ではわかりやすさを考慮して自動運転を使用します(引用資料の表現を除く)。 自動運転という言葉が普及し始め、時と場合で様々に解釈されることがあります。自動運転を銘打った車が市販されていますが、警察庁も注意を呼びかけているように、そのような車であっても、運転者は常に運転に注意を払う必要があります。 自動運転の状態には、ドライバーが全ての運転操作を行う状態から、自動車が一部の運転操作を行う状態、そして自動車が全ての運転操作を行う状態(無人も可)まで、複数の段階があります。日本では、こうした自動運転の段階を表1のようにレベル1からレベル4に分けて定義しています。先ほどご紹介した自動運転を銘打った車は、表1の定義からするとレベル2であるといえます。 本稿での自動運転は、レベル4の完全自動運転のことを指します。なお、表1の安全運転支援システムは、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driving Support System)とも言われます。その中には、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)やレーンキープアシスト、ア研究部主席研究員 西堀 泰英はじめに自動運転の種類と定義
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