まちと交通 2016年11月 57号
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公益財団法人 豊田都市交通研究所2016年11月57号自動運転の社会への実装に向けて特集走行中の自動運転車の車内 撮影:西堀お知らせ<今後の予定>●日時:12月16日(金)、2017年1月18日(水) いずれも18:00~19:00●会場:「豊田都市交通研究所」(豊田市元城町3-17 元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中 (http://www.ttri.or.jp/machi/machi.html)「まちべん」に参加しませんか  今年度より豊田都市交通研究所研究企画委員を拝命した。2008年まで2年少々の間研究員として勤務して以来、久しぶりに研究所の仕事に関わることになり、身が引き締まる思いである。 研究所のミッションの一つは、自動車を社会的に賢く使う方法の追求である。この点で私は、エコ通勤の普及速度を上げることが重要ではないかと考える。地方都市における通勤交通の自動車シェアはきわめて高いが、自動車通勤は、数ある自動車利用法の中でも最も賢くないものの一つであろう。単純な往復行動は自由に走れる自動車の特性を活かしているとは言い難いし、何よりも、通勤に使われた自動車が退勤まで駐車場で眠ることになるのがよくない。勤務地が都心部であれば、貴重な土地が自動車を置くためだけに使われてしまう。 こうしたことを踏まえ、国土交通省は10年以上前からエコ通勤を積極的に推奨している。優良事業所向けの認証制度の歴史も長い。しかし、この制度による登録事業所は全国で642しかない(2016年9月末現在)。10年以上の各所の積極的な活動にも関わらず、エコ通勤は広く普及しているとはいえないのが現状である。 その原因は、地方都市では公共交通で通勤すると時間も費用もかかり、そのうえ文化的な生活ができないためであろう。かくいう私も、研究員時代は勤務地が豊田市駅至近だったにも関わらず、通勤途上に買い物や食事が気軽にできるという理由で鉄道ではなく自動車で通勤し、駅前の駐車場にマイカーを停めていた。 こうした現在の地方都市の環境を鑑みると、各事業所の自発的な取り組みでエコ通勤を進めるのは無理があるかもしれない。では、どうすればよいだろうか。 実は私は、モータリゼーションの進んだ地方部に店舗展開しているにも関わらず40年以上前から職員のマイカー通勤を禁止している企業の社宅で生まれ育った。父が鉄道やバスで通勤するのはごく当たり前のことであったが、にも関わらず、社宅における自動車保有率は高かった。そうした企業に勤めていても、買い物やレジャーでは自動車を積極的に使っていたのである。 つまりマイカー禁止が「当たり前」になれば、皆自然に自動車を賢く使えるようになるのであろう。私はこのことから、エコ通勤の普及には強制力も必要かもしれないと思っているところである。今こそエコ通勤を流通経済大学経済学部 教授板谷 和也

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