まちと交通 2016年5月 55号
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世の中で導入されたマイナス金利の金融策によって、本来、資金運用を中心とした当研究所の財政運営は厳しさをより一層増しており、経費節減に一層努めるとともに、競争型資金の獲得、受託事業の更なる確保に努めていかねばならない状況であります。一方、設立して四半世紀を迎えた当研究所の社会における役割を存分に発揮するためには、積極的にニーズを的確に捉え、昨年度よりも多いテーマ数で自主研究を企画して、研究所の重点4分野について豊田市はもとより国内外の地方都市で持続可能な交通まちづくり施策に反映されるよう、社会貢献していきます。1 調査・研究活動A.交通安全分野 2015年における全国の交通事故死者数が4,117人となり、2014年の4,113人から4人増加しました。これは2001年の減少以来15年ぶりの増加であって、社会的により一層交通安全を喫緊な課題と認識しています。そこで、下記の4つの自主研究テーマを実施していきます。①自動運転普及がもたらす都市交通への影響研究:注目されている自動運転について、既存調査、アンケート・ヒアリング調査等を通じて自動運転の普及がもたらす光と影の両視点から評価します。②市街地での規制速度遵守を促す環境整備に関する研究:平成26~27年度のISA研究で得た走行速度のデータを活用して、道路特性・地区特性との関係についてより詳細に分析します。③県民性を考慮した超高齢社会における交通安全思想の普及:運転者の意識の地域間の違いを県民性と捉えて、比較分析した上、それを前提として交通安全啓発のあり方を考えます。④高齢運転者の法令違反特性及び防止対策に関する考察:交差点で発生した交通事故を主な対象とし、高齢者の法令違反と事故類型との関係性を分析して、それを踏まえた防止策を考えます。B.交通円滑化分野 平成27年度の研究成果を活かしてビックデータを基にした分析のテーマのほか、現在取り組んでいる交通円滑化に関する諸活動をより見える化するための指標づくりを目指します。①豊田市における貨物車の走行実態基礎研究:平成27年度の研究成果を踏まえて、貨物車のプローブデータにより貨物車の走行実態を整理して、より効率的な走行ルートの活用策を検討します。②豊田市TDM施策の簡便な評価指標の研究:TDM施策の効果を見える化を図るための簡便的評価指標を検討します。C.公共交通分野 これまで蓄積できた全国先駆けのタクシーの実態調査結果を基に、利用特性を中心に分析を深めていきます。また、これまでになかった新しい取組として、育児しやすい社会づくりを念頭にしたテーマも設けました。①日報データによるタクシー利用特性に関する研究:平成27年度の受託研究で得たタクシーの日報データを活用して自主的にタクシーの利用特性を分析します。②乳幼児を伴う路線バス利用の際の障壁に関する研究:育児世帯のバス利用を促進させるために、ベビーカーや乳幼児を伴うバス利用に関するバリアを調査します。D.環境分野本分野では、環境から交通へアプローチするテーマのほか、その他分野に分類し難い総合的な視点からのテーマを2題としました。①高齢者モビリティの選択要因と支援方策に関する研究:高齢者が運転免許を更新するための講習を受ける際、診断結果を踏まえながら、安全教育のみならず、公共交通の利用方法の講習も実施して、総合的に高齢者のモビリティ選択を支援します。②多様なモビリティ共存による低炭素交通実現研究:大きな目標の達成を念頭に、次世代自動車の普及に関する施策の評価を実施します。 上記の自主研究テーマを中心に、既に獲得した科学研究費補助金/基金(継続テーマ:3)やその他外部資金(採択決定:1)による研究テーマを展開します。また、受託研究としては、既に決定済み継続テーマのほか、これまでの受託実績をベースとした営業活動や新規開拓を目指す営業活動によって複数なる受託研究を契約に結び付けて研究活動を展開していく予定です。2 研究成果広報・関連活動 研究所の設立25周年を記念し、研究成果をより広く社会に役に立たせるための広報活動として、「研究成果報告会」(7月5日)とおおよそ1ヶ月一回の「まちべん」の開催および、「年報」と年に4回の「まちと交通」(本紙)並びに各種研究成果報告書の発行等を引き続き行っていきます。また、研究の質を高めるために各方面の有識者の助言を伺う「研究企画委員会」を開催していきます。平成28年度研究活動計画研究部部長 安藤 良輔
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