まちと交通 2016年5月 55号
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図2/平成27年人身事故の事故類型割合図3/高齢者(65歳以上)が全体に占める割合の推移87件4.4%1,641件3.7%46件2.3%464件1.0%828件41.4%18,113件40.8%508件25.4%11,924件26.9%202件10.1%4,763件10.7%45件2.3%730件1.6%284件14.2%6,734件15.2%0%20%40%60%80%100%豊田市(計:2,000件)愛知県(計:44,369件)横断中正面衝突追突出合頭右左折車両単独その他1.001.051.091.131.191.231.271.341.421.501.561.001.141.211.231.291.321.431.311.531.391.740.600.801.001.201.401.601.8017年18年19年20年21年22年23年24年25年26年27年人口死傷者数【高齢者が占める割合の変化(H17年⇒H27年)】人口:13.3% ⇒20.9%(1.56倍)交通事故死傷者数:7.7% ⇒13.4%(1.74倍)※H17年を1.0としてグラフ表示事故となる可能性が他の事故形態と比較して高いことがわかっています。やはり人身事故件数あるいは死亡者数は、道路インフラの状況や土地利用・地勢状況に拠るところも多分にあるように思われます。 近年、高齢化が進むとともに高齢者が関わる交通事故が問題となっています。警察庁発表の平成27年における交通事故の特徴として、高齢者の人口あたり死者数は減少傾向にあるものの死者に占める高齢者割合は過去最高(54.6%)であったことが挙げられています。 図3は豊田市の全年齢に占める高齢者(65歳以上)の割合の推移を示したものです。平成17年から27年の11年間で、人口の占める割合は13.3%から20.9%へと1.56倍の増加ですが、交通事故死者数は7.7%から13.4%へと1.74倍の増加となっており、高齢人口の増加に比して死傷者数の増加が大きいことがわかります。 また、図4は平成23~27年の5年間において、豊田市内の交通事故で亡くなった方がどのような状態(交通手段)で事故に遭ったのか、そしてどのような事故の形態(事故類型)であったのかを、60歳代以上とそれ未満で集計したものです。5年間での死者数は70人で、そのうち60歳代以上は42人であり60%を占めています。高齢者の特徴としては歩いて道路を横断中に死亡事故となっているケースが多いこと、自動車乗車中に正面衝突事故を起こす割合が非高齢者よりも高いことが顕著に見うけられます。 自転車による交通事故は、全体として交通事故件数が減少してきた中で減少の幅が比較的狭く、全国的に見て平成20年までは全事故に占める割合は増加していました。その後、減少率は大きくなり、平成27年の自転車事故が占める割合は18.4%となっています。 図5は豊田市において平成22~26年の5年間に発生した自転車乗車中の交通事故について、当事者別・年齢層に集計したものです。事故の当事者のうち過失が大きい方(同程度の場合は被害が小さい方)が第一当事者となるのですが、自転車乗車中は第二当事者となる事故の件数が多いことがわかります。自転車が第一当事者となるケースでは、「こども年齢層(0~15歳)」の事故が多く40%近くを占めています。 自転車が第一当事者となる事故をもう少し詳しく見てみますと、図6に示すように「出合頭」事故の割合が非常に高いことがわかります。高齢者では「車両その他」との衝突が他年齢層と比べて高いことも特徴として見られます。 道路幅員5.5m未満のいわゆる生活道路における交通事故は、幅員の広い道路と比べて事故件数の減少幅が小さいことが問題視されており、居住エリア全体で面的に最高速度30km/h規制をかけるとともにハンプや狭さくなどの物理デバイス等によって速度を抑制する「ゾーン30」の整備が全国的に進められています。図7は第二当事者、すなわち過失が少ないあるいは被害の大きい当事者がどのような状態(交通手段)で事故に遭ったのか、幅員別に集計したものです。幅員5.5m未満の生活道路では、自転車や歩行者の割合が高くなっていることが特徴として顕著にみられます。 平成27年に交通事故死者数が増加したことを厳しく受け止めながら、国の新たな交通安全対策の指針である第10次交通安全基本計画が平成28年にスタートしました。ところが、豊田市では平成28年に入ってわずか3ヶ月間で交通事故死者数が7人に達してしまうという事態に陥っており、市はこの状況を重く受け止め3月7日に非常事態宣言を発令しました。 今年の7件の死亡事故のうち、5件が「歩行中の高齢者が自動車に轢かれる」という事故となっており、本稿で紹介した過年度の分析結果等から見える事故の特徴が如実に表れております。 さらなる高齢社会の進展を踏まえ、交通安全対策は高齢福祉の観点からの対策も必要となるように感じます。即ち地域全体で高齢者の行動を「見守る」ことが必要となってくるのではないでしょうか。加えて、子どもの自転車事故対策強化の必要性も、今回の分析によって明らかとなっています。 また、豊田市は道路交通状況や地勢、高齢者事故の実態と傾向自転車事故の実態と傾向道路幅員別にみた交通事故の傾向おわりに- 交通安全研究の今後-

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