まちと交通 2000年10月 4号
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3 TTRI Letter No.4特集 コミュニティバスを考える 目的と地域の交通ニーズにより考えるべきである。たとえば、地下鉄が整備されている地域でバスを運行する必要性は低い。しかし、駅間隔は広いので駅まで行くことが困難であったり、地下鉄駅側にエレベータなどの上下移動装置がない場合には、地下鉄線と並行するような地上を走るバスを必要とする人がいる。 次に、1日の中で、何時、どれくらいの頻度で運行すべきであるか。これが一番の問題である。つまり、運行経費に直結するのである。一日全体の利用者数は、おおよそ住民数により決まり、運行本数が増えてもそれに比例して増えるとは限らない。一方で、利用者からは高サービスの要求がでてくる。市場経済が成立する場合は、料金とサービス水準の関係は需要と供給側の納得する点で収束するのだが、コミュニティバスではそうはいかない。ではどうするのかというと、コミュニティバスは単に走らせればよいのではなく、住民の生活を支えるために必要なのである。つまり、次章で述べる交通ニーズの把握が必要であり、そのためのバスである。7. コミュニティと交通(自治体の役割) 筆者は自治体からコミュニティバスの相談を受けることが多くなった。その際に発言することは、「行政が地域の交通事情、交通問題、交通ニーズをきちんと把握しているか」ということである。交通事故や交通渋滞は警察まかせ、公共輸送は事業者まかせ、道路整備は国・都道府県まかせで、自治体は住民からの要望を単に聞き、他機関へそれを伝えるだけ、と言う関係になっていないであろうか。つまり、総合的に地域の交通を考え、問題解決を進める体制ができていない場合が多い。その状況でコミュニティバスを導入すると、中途半端なものになるのは当然である。 ではどうしたらよいのか。自治体が各部局の力を結集して、地域の交通ニーズ・交通状況を把握することである。福祉部局や社会福祉協議会には、高齢者や障害者からの生の声が届いているはずである。経済部局には、地元のタクシー会社(これは地域の主要産業となっている場合も多い)や地域の商店街の現状、今後の展開等を把握し、または指導しているはずである。教育部局では、子供達の様々な活動を支援し、そのために必要な交通とは何かを議論しているはずである。土木部局では、道路整備、駐車場整備の将来構想を持ち、多様な事業展開を検討しているはずである。 コミュニティバスは単なるバス事業ではなく、住民の生活を支援するために不可欠な交通を確保するものである。そこには、コミュニティからの発想が必要であり、自治体の果たす役割は大きいのである。従来の交通計画とは広域に検討すべきものが多かったので、国・都道府県クラスの行政機関が主に担当してきた。しかし、生活交通クラスの計画は、自治体が責任を持つ必要がある。というよりも自治体が動かなければ計画ができないのである。このようにして行う計画を「コミュニティ公共交通計画」と名付けてみよう。 コミュニティバスは、民間バスの代替としてスタートした経緯はある。しかし、路線ごとに個別対応をしていくと、事業の妥当性に息詰まることがでてくるであろう。そうならないためにも、まず、自治体はコミュニティ公共交通計画をまとめ、それに基づいて、コミュニティバスだけでなく、スペシャルトランスポートサービス(ドアツードアの個別輸送サービス)、施設送迎サービス、等の地域の状況に見合ったシステムづくりに努める必要があろう。 さらに、隣接市町村との連携も、それぞれのコミュニティ公共交通計画を並べて、公共施設の相互利用などと同様な感覚で実施したら良いであろう。市町村間で細かい規定等が異なるであろうが、基本はあくまでもコミュニティ公共交通計画を実現することであるので、そのための工夫を講じればよい。コミュニティバスがその効果を発揮できたといえるのは、利用者が多かったことではなく、コミュニティの活性化に役立ったことで評価していきたい。8. これからの交通事業(交通事業者の役割) 民間路線バスが次々となくなっていく状況の中で、交通事業者は今後何をするのだろうか。消えてしまうのだろうか。それはもったいない話である。交通事業者は今までの貴重なノウハウを活かして、市町村のコミュニティ公共交通計画の策定と実現に協力していただきたい。その際に、交通機関はバスだけでなく、タクシー等の個別機関も考慮に入れてほしい。もっとも、バス・タクシーの規制緩●武蔵野市ムーバス
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