まちと交通 2000年10月 4号
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TTRI Letter No.4 10客施設に設けるべきであるし、乗り継ぎ需要が多く考えられる場合には直通運行すべきである。集客施設ではなるべく玄関に近いところに停留所を設け、自動車に対する有利性を確保するといった細かい工夫も行わなければならない。また、路線が自治体の域内にとどまることも不自然であり、場合によっては自治体間での連携を探っていく必要もあろう。 筆者はしばしば、自治体の施設で最寄りのコミュニティバス停留所の位置を尋ねても要領を得なかった体験をしている。このように、役所内で周知されていないのは問題外として、住民や他地区からの利用者に存在を知ってもらうための広報活動は重視されるべきである。また、知ってもらうためには、路線やダイヤが分かりやすい方が有利なのは自明である。域内を網羅する形態のコミュニティバスは複雑になる傾向があるが、マニアでも覚え切れないような路線では気軽に利用できない。また、各路線の名称に無意味な数字やアルファベットをあてる場合も多いが、これも感心しない。運転手が乗客に対して説明に窮している場面に何度も遭遇している。これらは、利用者を全く理解していない路線設定の典型例である。 以上のように、多数の乗客に利用されるためには、シンプルでかつ利用しやすい路線・ダイヤ設定と広報活動に心血を注ぐことが基本であって、愛称や車両デザインなどはあくまで次の課題であると心得るべきである。そして、「試行」「実験」と名乗ることのメリットを生かし、利用者や地元住民との議論の中から臨機応変に改善を行うシステムも同時に機能させることは言うまでもない。バスは会議室ではなく現場を走っている コミュニティバスに関する確たる方法論もデータベースもなく、各地でさまざまな試行錯誤が現在進行形で行われている状況で、計画者がコミュニティバスを検討するための最も手っ取り早い方法は何か? それは、実際に運行されている路線バスやコミュニティバスに乗車することである。そして、既存のバス路線にはどのような問題があり、どうすれば解決できるのか、自分だったらどのようなバスなら乗る気になるのかを体感することが、「乗る」コミュニティバスを生み出す第一歩になる。バス停図-2 システムイメージ図利用者宅GPS車載機位置把握位置情報バス公共施設のデマンドバス停利用者は、希望の行き先ボタンを押す電話で 問い合わせバス到着予想時刻を案内デマンド対応により迂回運行電子バス停管理センター加 藤 博 和 プロフィールHirokazu Kato◆現 在:名古屋大学大学院 工学研究科 地圏環境工学専攻,助手◆最終学歴:名古屋大学大学院,工学博士◆専門分野:「交通環境計画」,「環境評価」◆ホームページ: http://orient.genv.nagoya-u.ac.jp/kato/bus/index.htm
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