まちと交通 2000年10月 4号
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Topics 2 バスロケーション案内システム「Time・b」 ◆トヨタ自動車◆9 TTRI Letter No.4特集 コミュニティバスを考える「役に立つ」コミュニティバスを生み出す方法が多いという点が挙げられる。 結果として、コミュニティバスと名乗るものの多くは、従来の公共施設巡回バスや福祉バス、あるいは一般路線バスに多少手を加えた程度のレベルにとどまっており、冗長で不便な路線が多い。また、既存公共交通網と全く独立して運行されている例も多く見受けられる。「公共施設巡回」や「廃止代替」の発想から脱却することが、コミュニティバスにとっての大きな課題と言える。バスは多数の客に利用されてこそ存在意義がある バスという言葉は「オムニバス(omnibus)」の略であり、多数の客が乗り合うことを意味する。日本語の「乗合自動車」もその意味を受けた言葉である。逆に言えば、多数の客が乗り合っていないバスはバスとは言えない。これはコミュニティバスでも全く同じことであり、もし多数の客が乗らないのであれば、バスでなくタクシーのようなサービスを提供するのが費用的にも妥当である。コミュニティバスは、数多くある輸送サービス提供手段の一つでしかなく、適材適所を心がけることが必要である。したがって、自治体が運営するからといって、域内全域を画一的に網羅する路線を設定するというのは全くの誤りである。 乗合バス事業者の存立条件が公営企業を含め採算性確保であることは既に述べた。しかし、自治体主導のコミュニティバスではこの条件は不要であり、むしろ重要なのは乗客数を最大化することである。乗客が多ければ税金のムダ遣いと言われることもないし、それだけ住民福祉や環境負荷削減にも役立っていることになる。コミュニティバスの利点は、採算性という重しがとれ、従来に比べて自由な発想で路線設定や車両選定ができ、結果的に乗客増につながる可能性があることである。実際にも、従来の路線バスをはるかに越える利便性を持つコミュニティバスが東海地方にも幾つか登場してきている。 コミュニティバスを運行する場合には、従来の交通計画的な発想は捨て、「どのような路線なら利用されるか」というマーケティング的な発想に転換すべきである。この時重要なのは、単に交通弱者を対象とするのではなく、できる限り自動車等から需要をシフトさせることや、意図する施設や地区へ設定路線に乗って来てもらうというような、より大きな需要の発掘を目指すことである。このことが結果的に、交通弱者にとっても使い勝手のいいコミュニティバス実現につながる。この時、街にとってのコミュニティバスとは、ビルにとってのエレベーターやエスカレーターと同じ位置づけであり、「街をより便利に楽しくするための装置」であるという意識を持っておきたい。 コミュニティバスの多くは、市役所・町村役場を拠点とした路線となっているが、そもそもこれらに対する需要がそれほど多いとは考えられない。また、路線間の乗り継ぎ確保を売りにするものも多いが、何も用事がないところで乗り換えさせられるのは苦痛でしかない。拠点は病院・福祉センターや駅・大規模小売店舗などの集 トヨタ自動車㈱は、バスロケーションを案内する新システム「TIME・b(タイム・ビー)」*を開発した。 このシステムは、バスの利用者に利便性の高いモビリティを提供することを開発のねらいとし、ITS(高度道路交通システム)技術を活用し、路線バスの経済性とタクシーの機動性を融合させた最先端のバスロケーション案内システムである。 「TIME・b」は、福祉バス、コミュニティバスや路線バスを対象にインフラ整備が不要なGPSと携帯電話のパケット通信**を利用することにより、運用者のコストを最小限に抑え、利用者への運行情報の提供やデマンドに対応した運行を可能にしている。 なお、本年10月より来年3月まで 愛知県西加茂郡三好町の自治体運行バス路線にてこのシステムのフィールド実験が行われる。*TIME・b:Toyota Intelligent Mobility Enhancement for Bus**パケット通信:送信されたデータ量に応じて料金課金される通信方法車載機とセンターPC

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