まちと交通 2011年2月 34号
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評価結果 算出した各路線の評価指標値をグラフにプロットしたものが図3です。今回設定した基準では、基幹バスはチェック1で基準に満たない路線が4路線ありましたが、チェック2ではすべての路線が基準を満たすこととなりました。地域バスについては、チェック1で基準を満たすものは3地域のバスにとどまっていますが、チェック2では14地域のバスが基準を満たしていました。 この結果とチェック3の定性的指標による評価を併せて出された改編方針は「利用促進会議」および「地域協議会」に提示され、具体的な改編案の検討がなされています。基幹バスに関しては、既に昨年12月に開催された「豊田市公共交通会議」において、改編案の承認がなされています。おわりに 豊田市では以上のように自治体バスの評価を実施しました。主となる視点は「効率的な運行がなされているか」ということでしたが、この考え方は一歩間違うとこれまでの民営路線バス縮退の「負のスパイラル」を繰り返すこととなってしまいます。「公共交通基本計画」で掲げた「公共交通は社会資本である」という理念を大切にし、評価基準の考え方、基準値そのものの検討を繰り返していく必要があると感じます。 また、検討開始当初は非利用者にとってのバスの価値を含め「クロスセクター・ベネフィット」※ 評価を検討してきましたが、データ収集に費やす経費等から方針を転換した経緯があります。この点についてはモビリティ確保の評価と併せて、当研究所の自主研究として今後も取り組んでいく予定です。              ※クロスセクター・ベネフィット:ある部門でとられた(しばしば出費を伴う)行動が、他部門に利益をもた                              らす(しばしば節約となる)という考え方図3 定量的指標による評価(チェック1,2)の結果公共交通について思うこと        研究部 主任研究員 國定 精豪 私が学生の頃は、東急東横線で川崎市にある新丸子駅と東京の渋谷駅の間を電車で通学していました。この電車は、まさに公共交通といっていいもので、朝は猛烈なラッシュ、終電もかなり混雑するというように多くの人が通勤や通学などに利用されています。 さて、現在私は豊田都市交通研究所で豊田市の公共交通を検討する機会も多くなりましたが、私が学生の頃に持っていた感覚の公共交通というイメージとは大きく違ってきています。当たり前のように利用できる人(する人)は利用条件のよい環境にある人や、なんらかの利用目的をもった人に限られていると感じています。 この豊田市では多くの人はマイカー利用を中心に移動をすることで成り立っていますが、マイカーの利用もできず、公共交通の利用が不便と感じている人(今後感じていく人)もいます。そのような人への公共交通サービスの提供を市とともに検討することもありますが、事業採算性のみで片付けられる時代ではないとひしひしと感じています。 放っておいても多数の人が使う路線がある一方、放っておくと使いたくても使いたい路線がないという状況がこれから増えていくと考えられます。 これからの公共交通はどこを走らせるか、何を走らせるか、ダイヤはどうするか、料金をどうするかなど、色々な面で、様々な人々が考え、そして協力して運行することが必要だとつくづく思うようになりました。研究員リレーコラム

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