まちと交通 2011年2月 34号
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「世界交通学会」が開催されたリスボンの街 写真:加知「世界交通学会」が開催されたリスボンの街 写真:加知34 平成22年度は当研究所にとって設立20周年にあたると共に公益財団法人として再出発した年でもある。研究所の基本的役割は、豊田市を事例に、日本の地方都市の交通まちづくりの推進に役立つ都市交通施策の研究である。具体的な研究テーマは市民のニーズ、技術革新の進展、時代の要請を反映して変化している。基本は環境性と安全性を確保した上で、すべての市民に対して利便性の高い交通サービスを提供することを通して、活気があり安心して住み続けられる地域社会を実現していくことである。車のまち豊田市での交通政策としての基本的課題は、成熟した“車”社会に向けた取り組みであり、次世代の“車”とITS技術を活用して高齢社会での持続可能な交通まちづくりのモデルを提案し構築して、広く発信していくことであろう。 特に道路交通事故は、解決を求められている主要課題であり、ドライバーと道路管理者、交通管理者そして自動車メーカーといった多くの主体の共働で多様な対応を推進することが必要である。現在、私も参加して検討している国の次期(第9次)交通安全基本計画では、歩行者・高齢者・自転車の安全確保に焦点をあて、生活道路での事故防止を大きく取り上げている。新たな対応として私は、基本原則とされるブキャナン・レポート(1963年)の考え方に立ち戻ることが重要と考える。すなわち、都市の道路について機能別階層構造を整え、自動車交通のための幹線道路(都市の廊下)と都市活動へのアクセスのための生活道路を明確に区別して、幹線道路に囲まれた地区を居住環境地域(都市の部屋)として、通過交通をなくして地区内に必要な車は速度を落として目的施設にアクセスし、子供たちや高齢者など地域の居住者が安心して生活できるような公共空間を生活道路が提供するという原則である。この原則の適用にあたってさまざまな交通静穏化施策が進められて効果をあげているが、導入費用や合意形成の問題から、適用地域は限定されている。私が注目しているのは速度規制と組み合わせた低コスト戦略で、面的速度マネジメント施策として市街地全体にわたって、時速30キロメートルの速度規制を導入するもので、現在その適切性、実効性の担保、導入プロセスを研究中である。(公財)豊田都市交通研究所 副理事長兼所長 太田勝敏生活道路の交通安全対策と面的速度マネジメント

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