まちと交通 1999年10月 2号
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イショ・モニュメンタル(中央部に幅数百mのグリーンベルトを持ち、片方向6車線ずつの大幹線道路)が走って入る。一方、長さ約17kmの主翼部分にはその中心にエイショ(中央分離帯としての1車線と、片方向3車線ずつの幹線道路)を挟んでエイシーニョL,W(それぞれが片方向2車線ずつの準幹線道路)が走り、それに並行してアベニーダ(地区幹線道路)やフア(地区道路)が数本ずつ設置されている。このうちエイショにはまったく交通信号がなく、エイシーニョも主翼の付け根部分を除けば信号は設置されていない。 当初、私はエイショ、エイシーニョ相互、ならびにこれらとアベニーダへのアクセス道路との相互乗り入れ方法がよくわからなかったが、一度理解すると非常にわかり易い構造である。 ブラジリアは10年程前から地下鉄の建設が進められているが、未だに開通のメドが立っていない。したがって都市公共交通機関といえばバスとなるが、バス利用者は主として中・低所得者層であり、プラノ・ピロット地区では自家用車利用者が多い。 ブラジリアに限らずバス運行はほとんど民間バス会社が行っているが、その運行管理は地方公共団体が責任を持っており、運賃収入は一度地方公共団体に入った後、実営業距離数に応じて各バス会社に配分されている。合理的といえば合理的である。バス停はお世辞にも美しいとはいえず、路線図も時刻表も表示されていない。バスの運転は概して荒く、制限速度を超えて営業運転していることも多い。 道路交通のピーク時間帯(1日に4回)は幹線道路を中心に大渋滞が発生するが、とりわけ都心部商業地区では激しい渋滞となる。 ブラジリアの道路照明は概して暗いため、横断歩道やロータリー部分での夜間走行は非常に危険である。また ブラジルは交通安全教育が不十分であり、運転手のマナーも決して良くない。乱暴な運転が多いし、方向指示器を使用するドライバーがほとんどいない。 私は新車購入後24時間も経たないうちに三叉路で追突された。相手車のドライバーが「交差点で止まったお前が悪い。」と言った時はさすがにかっとなって、それでなくても乏しいポルトガル語のボキャブラリーを最大限駆使して彼と言い争った。結局は保険会社の人に立ち会ってもらい、停止している車に追突した方が全面的に悪いと言う結論に至ったが、おとなし過ぎたり、言葉が十分理解できないとどうなっていたかわからない。 逆に、一度私が追突しかけたことがあった。それは、夕方に横断歩道の手前で前方車(ブレーキランプが壊れて点灯しなかった)がブレーキを踏んだのに気付かなかった時である。急ブレーキを踏んで事無きを得たが、この時ばかりは日本の車検制度を懐かしく思えた。 昨年からブラジリアでは、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいると、完全に渡り切るまで停車することが義務付けられたが、これが信じ難いほどよく守られている。ビデオに撮って名古屋のドライバー諸君に見せたい程である。もっとも、都心部やアベニーダに面した学校の前では五月雨式に横断歩道を渡る歩行者のため、交通渋滞が頻発しており、少し行き過ぎの感もある。 ブラジルでは日本の免許証(国際免許証も同様)が通用しないため、その内容を公証人(日本語を理解できる必要あり)にポルトガル語に翻訳してもらい、それを地元のDETRAN(交通部)に提出してブラジルの免許証に書き換えてもらうことになる。ところが私の場合は、JICAブラジル事務所を通じて申請後、すでに5ヶ月程経つのに未だ正式の免許証が発行されてこない。最初は2ヶ月間だけ有効の、それが切れる前に3か月有効の仮免許証を改めて発行してもらっている。JICA専門家として公用パスポート、公用ビザで滞在しているにもかかわらず、この状況である。過去ブラジルには10回以上赴任しているが、法に触れるような行為は一切していないので、単に事務処理上の不手際だと思っている。JICA事務所の現地職員はコンピュータシステムの2000年問題の影響だろうと慰めてくれるが、素直には信じ難い。 最近はブラジリアでも日本食が普及しつつあり、寿司の宅配店まで出現している。しかし美味を期待してはいけない。超一流ホテルの日本レストランでも蕎麦の汁に天汁が出てきたことがあり、苦言を呈するとそれに酢をたらして持ってきた(酢を入れない方がまだよかった)。 アパートではこちらの衛星放送を契約してNHK海外テレビ放送を楽しんでいる。現在のところ午後1時から6時までの5時間は放送休止となるが、日本との時差が12時間なので、朝7時のニュースを夜7時に見ることができ、日本ではほとんど見なかった「すずらん」も夕食後に楽しんでいる。もっとも日本語放送はこの1チャンネルしかないので、週末の夜のゴールデンタイムに「NHK俳壇」や「趣味の園芸」を見なければならない。4.エピローグ 19年前に東北伯カンピナグランデに赴任していた時に、知人の農場で出されたフェジョアーダを食べて激しい食中毒にかかり、チアノーゼ反応まで起こしかけた経験がある。50歳を超えてからの長期出張は、勤務先の学内外に多大なご迷惑をおかけしているが、ライフワークの一つとして頑張りたい。

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