まちと交通 1999年10月 2号
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規模なものから小規模のものまで街の至るところにあるため自転車の利便性は極めて高そうである。3.自転車利用の効用 都市における自転車利用は最近では環境面から注目されているが、実際には以下に示すように他にまだ多くの効用を持っている。①免許不要 : 子供から大人まで誰でも気軽に乗ることができる、②経済的 : 初期投資・維持費用が安い、③省スペース : 走行・駐輪空間が小さく済む、④適度な移動速度:歩くより速く車よりゆっくりしているのでヒューマンスケールに合う、⑤軽い : 持ち運びが容易かつ道路に負荷をかけない、⑥小回りが利く : 素早くドア ・トゥ・ドアの移動ができる、⑦健康に良い : 運動不足気味の現代人にとって適度な運動になる  等 一方で、その限界と問題点も以下のように挙げることができる。①天候に左右される : 雨や雪の日には利用し辛い、②地形に左右される : 坂の多いところには不向き、③放置自転車の増大 : 廉価かつ管理・責任の曖昧さによる無責任な取り扱い、④積載能力に劣る : 車のように荷物を十分に積むスペースが無い、⑤安全面に不安 : 走行区分が曖昧なために歩行者や自動車との錯綜が生じやすい  等 このように自転車利用にも一長一短があり、それらを十分に認識した上で、都市内において自転車をうまく活用していくための支援、またアイデアが求められる。4.自転車交通に関わる我が国の動き 地球温暖化対策を迫られている我が国でもようやく自転車の効用とその効率的利用に目を向け始め出した(表-3)。建設省では、全国で5都市をモデルに具体的な検討を始め、その中では車道の一車線を自転車走行用に当てることも視野に入れるというからかなり本格的である。また運輸省では、電車や列車に自転車を持ち込める事業(サイクリングトレイン)を開始している。朝夕のラッシュ時は避け、当面は小旅行や買い物などの利用者にターゲットを絞り、鉄道事業者で半年間実施した上で、需要が見込めるようならば全国の鉄道事業者に導入を呼び掛けていく方針のようである。5.自転車を活かしたまち 今後、世界の多くの都市で都市環境の保全、高齢化対策は最優先すべき共通のテーマとなり、まちづくりにおいてはバリアフリー、ノーマライゼーションが基本原則となることは間違いない。そのような中で、徒歩や自転車といった我々にとって最も身近な交通も様々な観点から再評価され始めている。 都市経済はこれまで、自動車の機動性を活かしながら効率性を優先して急速な成長を遂げてきたが、その一方で、都市環境は交通渋滞、大気汚染などの問題をも同時に生み出した。これらの問題は、今後ITS(高度道路交通システム)、電気自動車の普及などにより改善されていくであろう。しかし、先に紹介したオランダ、デンマークを始めとする欧州各国は、自動車に過度に依存する都市の危険性をいち早く悟り、都市交通の適正な使い分けを図ることで持続可能なまちづくりを真剣かつ着実に展開してきている。我が国でもこれらの教訓を踏まえ、21世紀は人と環境がストレスなくうまく調和できる交通環境を創造していくことが求められる。そこではコンパクトシティ、ヒューマンスケールといった視点からも環境都市に相応しい交通具として自転車は大いに期待される。参考文献1) (財)国際交通安全学会誌:「IATSS Review 特集/自転車」,Vol.18,No.1,1992.2) 岡並木他:「自転車の役割とマネジメント」,まちづくり資料シリーズ25   交通計画集成7,地域科学研究会,1998.写真2 自転車専用道(オランダ アムステルダム中央駅)表-3 自転車の活用に関わる最近の主な動き(注)本格実施のみならず、試行実験等も含む。名称都市部自転車利用モデル都市(建設省)サイクリングトレイン(運輸省)乗り捨て自由の自転車サイクリングバスレンタサイクル自転車共同利用(環境庁)・東京都区部・静岡市・徳島市・広島市・佐賀市(99年度)・富士急行(98.10~99.1)・JR北海道(97年夏)・三岐鉄道(三重県97.4~)・東京都台東区(自転車80台:98.10~98.11)・日本中央バス(群馬県富士見村96.4~)・JR東海高山駅・飯田駅(電動自転車10数台:97.4~)・広島市(サイクル&ライド社会実験:98.10~98.11)・東京都霞ヶ関周辺(自転車120台:97.11~98.5)

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