まちと交通 1999年10月 2号
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1.はじめに パステルカラーに彩られたかわいい車が豊田市内を走っています(図1)。この車両は、トヨタ自動車(以下トヨタ)が従業員を対象に運用実験している、電気自動車(以下EV)の共同利用システム「Crayon(クレヨン)」で使用している小型EVの「e-com(イーコム)」です。今回、新しい自動車利用システムであるCrayon運用実験の調査を行ったので、概要を紹介します。 自動車の共同利用といえばレンタカーシステムが定着しており、そのサービスも短時間利用・乗り捨て自由・宅配など多様化してきています。そしてさらに利用の高度化を図ったのが、カーシェアリングシステムです。これは、会員制などによる車両の共同保有と自由な車両の使用から成り立っており、実際に使用する際にだけ車両を占有するという新しい概念を加えて、車両の有効活用を図っています。 EVは、低騒音で排出ガスをまったく出さないなど環境に優しい車両ですが、一方、航続距離の短さ・充電スタンドの整備・価格が高いなどの課題も多くあります。 そこで、都心部や観光地といった短距離の使用が多くかつ利用頻度の高い地域を想定し、予約・運行管理などに先進のITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)技術を活用して実用化を図ったのがCrayonです。2.Crayonのシステム構成 トヨタEVコミュータシステム「Crayon」は、インフラ設備・利用者・車両から構成されています。 インフラ設備には、①車両の予約・運行管理などを行う「Crayonセンター(以下センター)」、②車両への情報提供を行うとともに車両とセンターとの通信を中継するトヨタメディアステーションの「MONET(モネ)情報センター」、③充電器・駐車場・デポターミナル(利用受付端末)からなる「Crayonデポ(以下デポ)」(図1)があります。また、通信手段に携帯電話を使用しています。 利用者には、①インターネット/イントラネットが可能な「パソコン」と、②会員証であり車両キーにもなる「Crayonカード(以下カード)」が必要です。 Crayonで使用されているEVコミュータ「e-com」の主要諸元は電気自動車共同利用システム「Crayon」の紹介トヨタ自動車で社内運用実験主幹研究員 平山 正広図1 Crayonデポとe-com図2 Crayonの利用イメージ
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