まちと交通 2004年9月 10号
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寄稿Review7 TTRI Letter №10どである。共同利用システムは、予約・管理・決済をITSによって高度化することで、事業がかなりやりやすくなった。タクシーやバスなどの公共交通機関も一種の共同利用車であり、配車効率化や車両位置情報提供などのITSによって、より使いやすい乗り物になっていくであろう。3) スマートP&R 上記のような都心部での政策と対になるのが、都市周辺部における中大量輸送機関のアクセシビリティ向上策である。ここでは都市周辺部鉄道駅におけるITSを活用したパークアンドライド(P&R)を提案したい。都市高速鉄道が発達した日本での大都市で、駅周辺に業務・商業・公共施設と住宅を高密度に整備することが、日本型コンパクトシティとして重要であろう。このとき、商業施設、オフィス、公共施設などの駐車場と都心部へ鉄道で通勤する人のP&R駐車場をシェアする仕組みが重要である。 このような駐車場では、平日は通勤のP&Rとオフィス・公共施設の利用が多く、休日では商業施設の買い物客と都心部訪問のP&Rが中心となろう。駐車場をDSRC利用による決済にするとともに、そこで使われるICカードで商業施設、オフィス、公共施設、公共交通機関などの認証や料金決済を行えば、駐車場とこれらの施設でさまざまな連携(買い物客割引など)ができるであろう。4) 交通エコポイントとICカード共通決済 経済的インセンティブによって公共交通機関の利用を促進するには、公的補助などによって運賃を現在の半額以下にする必要があろう。都市圏全体の公共交通機関に対してそのような補助を行うことは財政的に不可能である。直接的な運賃補助よりも格段に少ない財政負担で複合的な効果を与えるものとして、ポイントシステムの導入が考えられる。 ポイントシステム(航空会社のマイレージシステムを含む)は、商品の値下げよりも供給者側の金銭的負担が少ない販売促進策で、顧客の囲い込みや顧客データの取得などができることから急速に普及している。ここで提案する交通エコポイントシステムは、公共交通の利用などのエコ交通行動に対してポイントを付与し、蓄積したポイントに従ってさらにエコ交通行動を行いやすくする特典を与えるシステムである。これにより、エコ交通行動への囲い込みが促進できるほか、基礎的なデータの取得、CO2削減量など参加者への効果の可視化、さらには他のエコ経済活動とのポイントの互換化によってエコマネー化への展開までが見込まれる。 名古屋市では、名古屋市総務局、NPO法人エコデザイン市民社会フォーラム、名古屋大学らが主催して、本年10月から2ヶ月間、エコポイントTDM社会実験を行う。 この実験では、RFIDタグ付ストラップを付けた携帯電話、地下鉄駅に設置したタグのリーダー、センターのポイント管理サーバーから成るシステムを構築した(図-3)。 図-3 交通エコポイントのシステム

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