まちと交通 2004年9月 10号
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特集:ITSの取組みReport23 TTRI Letter №10ITS施策を考慮したシステムアーキテクチャーに関する研究(財)豊田都市交通研究所 主任研究員 坂本 利彦1.研究の背景・目的  日本のITSに関する潮流を外観すると、平成8年に、旧関係5省庁(警察庁、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省)は、道路、交通、車両分野の情報化について、「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」を策定し、長期ビジョンを示した。その後、平成11年には、近年のITSの研究開発・実用化の活発化を受け、今後のグローバル化を見据えた統合的なシステム化と効率的な具現化を進めながら、社会ニーズの変化や技術進展に対応可能なシステム化をめざした全体設計図が必要となり、産学連携のもとに、「ITSに係るシステムアーキテクチャー」が公開された。これは、システムを構成する要素(技術や個別システム等)とその関係を表現したシステム全体の構造(骨格)を示し、システムの全体像の概観が可能であり、特に、社会ニーズの変化と技術進展に対する柔軟性、及び、相互運用性・接続性の確保が重視されている。ここでは、9つの開発分野(ナビゲーションシステムの高度化、自動料金収受システム、安全運転の支援等)、21の利用者サービス(交通関連情報の提供、目的地情報の提供、自動料金収受、走行環境情報の提供、危険警告等)の下に、56の個別利用者サービス、172のサブサービスを体系的に設定している。 しかし、このアーキテクチャーは、体系化において9つの開発分野が最前列に位置付けられていることからも分かるように、技術開発先行で進められたため、システムエンジニア、特に、システム設計者にとっては役立つが、社会的ニーズを考慮しながらITSに関する施策を検討する企画者(行政等)にとっては理解するのが難しい。 そこで、本稿では、技術開発的アプローチでまとめられた元来のシステムアーキテクチャーに、社会的ニーズからのアプローチを加えて、再構築を目的とする。2.研究内容(1)社会的ニーズの把握 ITSは道路、交通、車両分野の情報化を対象としていることから、社会的ニーズを把握するため、これに関連する主要な都市・交通問題を整理した(図表1)。ここでは、都市・交通問題を7項目(交通渋滞、路上駐停車、都市環境悪化、交通弱者のモビリティ低下、交通事故、都心の求心力低下、災害時緊急時の対応)に大別し、各項目別に具体的な内容を細分化した。(2)都市交通施策の抽出 社会的ニーズとして整理した都市・交通問題の解決策となる都市・交通施策を10項目抽出した(図表2)。これは、細分化された都市・交通問題の具体的な内容から解決策を検討した上で、交通需要の適正化、公共交通の利便性向上、マルチモーダル施策、駐車場等の有効利用、都心の魅力向上、安全で快適な歩行者環境確保、安全運転の支援、物流・工事車両の効率化、災害時緊急時の対応、環境への対応にまとめた。(3)ITS施策の抽出 都市・交通問題の解決策としてまとめた10項目の施策に対して、ITSによる支援・活用・向上を図りながら実現化するために、10タイプのITS施策を抽出した(図表3)。これは、10項目の施策に対してITSの支援・活用・向上による解決策を検討した上で、交通需要の適正化支援型、公共交通支援型、マルチモーダル支援型、駐車場等有効活用型、都心魅力向上型、歩行者支援型、安全運転支援型、物流・工事車両運行支援型、災害時・緊急時支援型、環境支援型の10タイプに大別し、各タイプ別に具体的なITS施策を34に細分化した。図表1 都市・交通問題図表2 都市・交通施策

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