まちと交通 2004年9月 10号
23/32
特集:ITSの取組みReportTTRI Letter №10 22 その結果、図-3が示すように、年間の稼働率は30%から40%の高い数値で推移している。特に、施策を実施した5月以降は高い稼働率を示しており、全会員で見てみると11月には50%を超える最も高い値を示している。 次に、図-4より利用回数と走行距離について見てみると、利用回数は1ヶ月あたり平均700回程度の利用があり、走行距離については約10,150kmの利用があった。この結果は、同条件にて実験を実施した平成14年10月~15年3月の平均的な利用状況(利用回数:500回/月、走行距離:6,400km)と比較すると大幅な利用増であり、実験を継続していくことにより市民への共同利用の定着化が図られていると言えよう。 また、環境改善効果としては、電気自動車の利用距離分の排出物質削減量が削減されたこととすると、年間走行距離121,761kmで二酸化炭素(CO2)約12,475kg、窒素酸化物(NOx)約54kgの削減効果があった。この数値は前年度の削減量(二酸化炭素:約11t、窒素酸化物:約26kg)と比較して大幅な増加であると言え、電気自動車の稼動率・利用回数・利用距離の増加によって、環境面においても社会的に大きな影響を与えていることが実証できたと言える。図-4 利用回数と走行距離の推移4.今後の展開 これまでの実験から、共同利用システムが新たな公共サービスとしての可能性を持つことや都市環境の改善に寄与すること等の有効性は確認された。 今後の展開としては、本年8月にオープンした豊田市ITS情報センター(※詳細は、本誌17頁~19頁の岩田氏によるレポートを参照:ITSを展開する総合的なコントロールセンター)に管理センター及び駅西デポの機能を移転することで、本市で実験・実施していく各種ITSメニューとの共通活用を促進する。また、総合情報提供システムにおける目的地情報・移動手段情報との連携を図ることで、ITS情報センターへの来訪者に対して、中心市街地の新たな短距離移動手段及び鉄道駅からの端末交通手段としての小型電気自動車共同利用システムの周知を行い、さらなる利用促進を図っていく予定である。 また、小型電気自動車共同利用システムの事業化を目指すため、カギとなる法人会員のさらなる利用促進とシステム理解のための運用方法の変更等を進めていきたい。具体的には、法人会員に対して、「既存の社用車に掛かる経費と共同利用システムを採用した場合に掛かる経費」を比較・説明することで、コスト面における共同利用システムの有益性をPRし、事業化時における法人会員の取り込みを行う予定である。さらには、既に共同利用システムの事業化を実施している自治体や法人へのヒアリングを実施することで、事業採算性の検証や事業主体となる組織の検討を行って行きたい。この際には、現在のシステムにとらわれることなく、共同利用といった視点から、現行の運用システムを見直していく必要もある。一例として、検討案であるが、システム基盤部分の整備経費等が低コストに抑えられる点を考慮すれば、現在のようなデポターミナル、充電器等を必要としない、より簡素なシステムの導入が考えられる。以下に、今後の検討課題となる簡素化された低コスト化をねらうシステム概要(図-5)を示す。◎システムの概要1自前でシステムを構築せず、ASP(Application Service Provider)サービスを利用し共同利用を実施する。 2充電器やデポターミナルは必要なく、その機能は車両側(カードリーダ、通信用車載器、カーナビなど)に装備する。 3車両にはGPS車載器が取り付けてあり、無線網、インターネットを通じ事業者側でリアルタイムに確認・管理が可能である。図-5 簡素化された低コスト化をねらうシステム概要
元のページ
../index.html#23