まちと交通 2004年9月 10号
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豊田市都市整備部交通政策課 主査 岩田 裕二総合情報提供を核としたITS情報センターの整備特集:ITSの取組みReport17 TTRI Letter №101.背景 豊田市は日本の地理的中心に位置する人口35万人の中核都市である。市町村合併の繰り返しにより、複数の市街地が分散した都市構造となっており、市の基幹産業であるトヨタ自動車㈱をはじめとする自動車関連企業事業所も市内に分散している。そのため、居住者や従業者は、様々な生活行動の中で日常的に広範囲での移動を余儀なくされ、公共交通サービスが脆弱であることから、その主たる移動方法が自動車であり、他の大都市圏(首都圏、近畿圏)と比較して、自動車分担率が高いという特徴がある。それゆえ、自動車依存型の都市である豊田市では、中心市街地や大規模工場周辺での道路の慢性的渋滞、交通事故の多発、公共交通の衰退など、様々な交通問題が表面化している。 これらの問題に対応するため、総合交通対策の一環として2002年に豊田地域ITS戦略プラン『STAR☆T21』を策定し、道路整備、TDM、マルチモーダルなどITS技術を活用した総合的な交通対策に取り組んでいるところである。このプランの中で「総合的な情報の提供」というメニューが挙げられており、総合情報提供システムはこのメニューに位置付けられている。 一方、全国的な傾向として、少子・高齢化、国際化、急進展する情報化社会への対応、市町村合併への対応、中心市街地の空洞化がとりあげられている。これらの今後顕著化してくる課題に的確に対応していくため、総合的な移動支援情報を提供する中心的な施設としての役割を果たすものとして、ITS情報センターの整備に大きな期待が寄せられている。 2.情報提供の現状  今まで豊田市では、ITS技術を使って2つに大別される情報提供を行ってきた。1つは、自動車への移動支援情報として、駐車場の満空情報や道路の渋滞情報の提供であり、もう1つは、人への移動支援情報として、市営バスの位置や時刻表・乗り換えに関する情報提供である。それぞれの情報利用シーン毎の取り組み現状を下記に示し、問題点を明らかにする。 (ア) 自動車の移動支援情報 ①自宅やオフィスでの利用シーン  ・各個別駐車場の施設情報をインターネットにて提供  ・各駐車場の満空情報をインターネット及びケーブルテ  レビにて提供  ・主要幹線道路における道路状況映像をインターネット  及びケーブルテレビにて提供 ②移動中の利用シーン  ・各個別駐車場の施設情報を携帯電話にて提供  ・各駐車場の満空情報を路側板、路側放送、VICS、     携帯電話にて提供 ・立寄り所としての道路案内所では、インターネットや  ケーブルテレビ、電話/FAXにより、駐車場の施設情   報・満空情報及び道路主要幹線道路における道路状況  映像並び に道路の渋滞情報を提供 ③目的地近傍での利用シーン  ・各個別駐車場の名称及び満空情報を路側板にて提供(イ) 人の移動支援情報 ①自宅やオフィスでの利用シーン  ・市営バスの路線図や時刻表、料金表をインターネット  や印刷物にて提供 ②移動中の利用シーン  ・バスの現在位置情報を主要バス停の情報案内板にて  提供 ③目的地近傍での利用シーン  ・バスの鉄道乗り継ぎ案内を主要バス停の情報案内板に  て提供  自動車の移動支援情報に関しては、各利用シーンに応じて多様なメディアで情報提供されており、ひとつの完結された形となっている。しかし、土地勘のない人にとっては、VICS以外では、駐車場周辺の地図しかなく、わかりづらい。  人の移動支援情報では、特定されたバスの情報しかなく、移動中においては主要バス停でしか情報が得られない。移動者の視点からみれば、市営・民営の区別なくバスに関する情報を得たいはずである。また、乗り継ぎ情報は、移動途中で必要となってくる場合が多く、いつでもどこでもシームレスに情報を得ることができない状況である。  自動車、人の移動支援情報双方に共通することでは、目的地に関する情報が一切提供されていないことが挙げられる。駐車場やバス停は通過地点であり、目的地ではない。目的地となるのは、観光地や施設、イベント会場や店舗である。市民のレジャーや来訪者の観光等を考えた場合、目的地情報は必要不可欠なものである。3.総合情報提供システムの概要  総合情報提供システムは、人が移動する時に必要となる目的地の情報や公共交通等の情報を総合的に提供できるシステムであり、携帯電話やインターネットなどの多様なメディアで同一の情報を提供することができるので、利用者は様々な利用シーンに応じてシームレスに情報を入手することができる。特に出発地から目的地までの間の情報では、検索エンジンを駆使し、公共交通交通の乗換え案内や歩行者や車での移動ルートの検索結果を複数提供できる機能を持っている。これらは、地図情報(GIS)をベースとした直感的にわかりやすいインターフェイスにより提供される。

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