まちと交通 2004年9月 10号
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特集:ITSの取組みReportTTRI Letter №10 16それぞれのデータの入手を引き続き行い、事故発生原因の究明と、解決策としてのITS技術の再検討を図ることを計画している。図-7 注意喚起情報(警察庁等によるDSSS実験風景から) (4)計画の推進体制 「STAR☆T21」を効率的により円滑に進めるため、計画作りの段階から「豊田市ITS推進会議」を設置している。この会議は2002年1月に発足している。メンバーはITSおよび交通工学等を専門とする大学教授、ITS関係4省庁(総務省、経済産業省、国土交通省、警察庁)の出先機関および県の関係者、商工会議所、トヨタ自動車を初めとする民間企業、および市民の代表としての青年会議所や区長会の代表などで構成されている。この会議は年に3回程度開催され、施策展開における相互の調整やニーズ把握などを行い、円滑な施策遂行に資するものと位置付けている。また、下部組織としてのワーキングにはこれらのメンバーの他にITS関連企業の参画によって、技術的・システム的な支援を得ている。市町村レベルでのこの種の会議は他に例がなく、たいへんな注目を浴びている。 この豊田市ITS推進会議での包括的な産学官民の連携だけでなく、個別のアプリケーションの計画および展開にも、特に市民との連携を行っている。例えば、「みちナビとよた」(詳細は、本誌9頁の加藤氏によるレポートを参照。)で提供するバリアフリー情報の収集について、財団法人豊田市身障者協会の施設検討委員会や、福祉ガイドブックを作成・更新している任意団体である豊田市ガイドブック委員会との意見交換によって情報提供内容を確定し、提供後にも、さらに意見交換によって提供内容や方法の再検討・改善を行っている。4. 今後の展開 ITS世界会議愛知・名古屋2004において、豊田市はITSを活用したスマートタウンと位置付けられ、まちづくりにITSが融合したひとつの例として、テクニカルツアーで各アプリケーションとその融合した姿を見学または体験していただくことになっている。ただしこれらの行事は豊田市のITSの展開にとってはあくまでひとつの通過点に過ぎない。今後の展開方針は、①評価改善による実用化、②統合化、③標準化、④広域化とした。 (1)評価改善による実用化 これまでに実施してきた社会実験などの成果を踏まえ、実験的位置付けから実用的な位置付けへの移行段階、国が推進しているITSの標準化や市民やまちづくりのニーズに対応したITSの定着段階にある。このため研究所や大学等の研究機関、地域・NPO・市民との連携を通じてしっかりとした各種評価を継続的に行い、実用化を目指す。 (2)統合化 これまで公共交通情報や駐車場満空情報の提供など、多くのITSサービスを実施してきたが、個別目的のために個別のサービスが行われ、システムも個別に構築されてきた。今後は各システムを統合し、利用者の受けるサービスを相乗的に向上させることを目指す。 (3)標準化 これまで国内他都市に比べ先行的にITSに取り組んできており、数々のサービスが実現されている国内有数のITS実現地域となっていることから、実施結果をフィードバックし、国や他都市に対し積極的に標準化を提案する。 (4)広域化 これまでは現在の豊田市域の中でのモデル地区を対象としたサービス展開が主であったが、今後は対象エリアの拡大を図る。また合併する新市域だけでなく、愛知県や各地域におけるITS推進協議会(愛知、岡山、高知等)など、広域的な連携の実現化を目指す。 豊田市では、将来の情報化社会、高齢化社会を見据え、こうした社会動向の変化に的確に対応し、市民が安全で快適に移動できる社会環境を実現するため、今後もITSを活用した総合交通対策に積極的に取り組んでいく。そして、ITSの実用化と充実に向け、よりわかりやすく、使いやすい便利なシステムを築きあげ、「人と環境にやさしい先進的な交通のまちづくり」に向け、着実に歩みを続けていく。
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