まちと交通 2004年9月 10号
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特集:ITSの取組み ReportTTRI Letter №10 14把握する効果として、前述した5つのまちづくり課題ごとに定量的な目標を設定している。これらの各目標が達成されることにより、「人とクルマが調和したモビリティの高いまち」という豊田地域ITSの目標が達成される。次章で課題を解決するための施策の紹介とあわせて、この課題ごとの効果目標および評価手法を展開する。(3) 計画の内容と個別目標 前述の5つの課題ごとに計画の内容および目標を述べることにする。 ① 渋滞解消 道路交通の最大の問題であり、各種情報提供により時間的・経路的な交通の分散と平準化を図るものである。これまでに豊田市ではこの問題を解決するための各種計画を策定している。すなわち交通容量拡大施策を謳った「豊田都市圏交通円滑化総合計画」、放射道路と環状道路のネットワーク化を目指す「21世紀都市幹線道路網計画」、そしてボトルネックの交差点改良を行う「豊田市交差点改良計画」などである。特に「豊田都市圏交通円滑化総合計画」では、その具体的施策の中にITSメニューを盛り込んでおり、実験を通じた各種情報提供によるITSの効果を検証することにより、ITSメニューの導入の必要性を例証する予定である。 具体的な施策については、すでに沿道状況(図-2)のライブカメラ映像の放送サービスとインターネット提供などによって道路交通情報提供の高度化が実現している。世界会議までに、高度で効率的な信号運用や、イベント時の臨時駐車場の満空情報提供を導入し、平常時の幹線道路およびイベント時の臨時駐車場周辺の渋滞緩和を図ることとしている。 図-2 沿道状況情報提供<目標> 渋滞解消は、豊田市でもITSを導入する前からTDMやマルチモーダル施策などの他のソフト施策や道路整備などとも共通の命題である。この課題は利便性の高い自動車社会の中で市民が直接体感する課題である。また、交通渋滞が解消すれば移動についての利便性が向上するだけでなく、移動時間の短縮による莫大な経済効果が得られることもあり、道路交通対策の永遠の課題となっている。本市では前述の「豊田都市圏円滑化交通計画」の中で、目標となる指標として「市中心部までの30分到達圏」を採用している。これは、市中心部(市役所)まで自動車で30分以内で到達できる地点の集合であり、この圏域の市域全体に占める割合は現在49%となっているが、これを渋滞解消によって80%まで高めることを目標としている。手法としては、感知器データやプローブ情報から旅行時間や総走行距離および総所要時間を算出し、前後比較することを予定している。② 公共交通利用促進 公共交通の利用促進は、TDM施策やマルチモーダル施策の重要な一方策である。子どもから高齢者まですべての人たちが便利に移動できるまちの構築に向けて、各種情報提供を行うとともに、地域の特性に合った鉄道やバスの運行サービスを展開していくことが必要である。施策の方向性としては、公共交通機関そのもののサービス向上と、公共交通機関への転換のインセンティブ付与に大別される。前者は、中心市街地玄関口バス(図-3)において、情報案内板(図-4)によるバスロケシステムと呼び出しボタンによる簡易デマンドシステムがすでに導入されている。世界会議に向けては、バスの各種情報(路線・時刻)や乗り換え情報を総合情報提供の一環として、インターネットや携帯電話に提供する準備をすすめている。一方後者は、端末図-3 中心市街地玄関口バス 図-4 玄関口バスの情報案内板
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