まちと交通 2004年9月 10号
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豊田市都市整備部交通政策課 主事 都築 保裕豊田地域ITSの構築(STAR☆T21)特集:ITSの取組みReport13 TTRI Letter №101.計画策定の背景 豊田市は、自動車産業の発展とともに成長した工業都市という歴史的背景を持ち、豊田市を含む中京都市圏全体について、自動車分担率が他の都市圏に比べて非常に高いという交通特性がある。特に豊田市では、通勤での自動車利用が約80%、全目的での自動車利用が約64%という高さになっている。一方、交通渋滞、交通事故の多発、公共交通の衰退、中心市街地の空洞化など様々な交通問題への対応は言うまでもなく、間近にせまる高齢化社会の到来、IT社会の進展、環境負荷の軽減などの今後の社会動向に着目した交通施策の展開が必要とされている。さらには、豊田市を含む周辺地域で実施が予定されている2005年愛・地球博の会場に向けた広域交通ネットワークの構築として、既存の東名高速道路以外に、第二東名高速や東海環状自動車道などの整備が急ピッチで進められており、これにあわせて市内の幹線道路の整備や交通の円滑化を図ることが急務となっている。 こういった背景の中で本市では、道路整備などのハード整備と交通需要マネジメント(TDM)などのソフト施策の両面から総合的な交通対策を進めており、特に1996年からはITSへの調査研究に取り組み、1999年からは具体的に市内の渋滞緩和を目的として「道路利用の効率化」と「自動車利用の効率化」の2つの視点から様々なITSを活用した社会実験を行ってきた。しかし、こうした実験を通してITSの有効性は実証できたものの、ITSが市民生活の中で真に意義のあるものかというとまだまだ多くの課題を残しているのが現状である。そこで今後の市の取り組みの方向性としては、ITSの導入にあたって「まちづくり」という視点を盛り込むとともに、特に行政の独自施策ではなく、民間企業や市民団体、NPOなどと協働し、企画から実行そして評価と改善という流れをともに進めていくことにより、市民にその良さを実感してもらい、豊田地域におけるITS推進の原動力としていくものである。また、今回は、この取り組みの概要と効果の想定、そして今後の取り組み方針について報告する。2.STAR☆Tスタート21の策定  豊田市は、市内の交通渋滞の緩和や交通の安全確保のみならず、地球温暖化など環境に配慮した「環境型交通都市」の実現を目指して、時期を3段階に分けてそれぞれの目標にそって取り組んでいる(表-1)。このうち、第2期(発展期)におけるITSを活用した総合的な交通対策について、「豊田市ITS戦略プラン」として平成14年11月に策定した。  「豊田市ITS戦略プラン」は、その目標の1つである「市民生活への定着」をスムーズに行うために、愛称を募表-1 ITSへの取り組みの3段階 図-1 STAR☆T21のロゴ 集・選定し、「START(スタート)21」に決定した。これはSmooth Traffic with Advanced Roads in Toyota city for the 21st centuryの頭文字をとった略語であり、豊田地域のITS展開の新たな始まり(スタート)と、豊田市の先進的次世代道路が21世紀の明るく輝く市民生活の星(スター)になるという願いを込めたものである。また「STAR☆T21」をより広く認知させるために、ロゴマーク(図-1)を作成し、普及啓発に努めている。3.STAR☆T21の内容と効果 (1)計画の特徴と区分  市民の日常生活への定着を図るためには、まず市民がITSの良さを実感できることが大前提となる。そこで発展期では、交通そのものの課題は言うまでもなく、交通に間接的に関わるまちづくりの課題も考慮に入れた総合的な交通対策づくりに努めている。  STAR☆T21の課題は交通のみに限らず、幅広くまちづくり全般に関わる問題にわたっている。課題は5つ設定しており、渋滞解消、公共交通利用促進、市街地活性化、交流促進および交通事故の削減である。STAR☆T21は、これらの課題を解決するツールをまとめたプランといえる。(2)計画が求める目標とその指標  豊田地域ITSおよびSTAR☆T21は、豊田市が取り組んでいる総合交通対策の一環であり、道路などのインフラ整備やTDMなどのソフト施策とも密接に連携していることや、複数のITSメニューを効果的に連携、配置することによる効果を期待している。そのため、個々のメニューの効果や評価は別の議論とし、ここでは、ハード施策、ソフト施策を含む全体の効果想定とその評価をしていく。

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