交通まちづくりとともに
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461章  黎明期 1991-1994( 平成3年 〜6年 )実証とも言える。研究所は、こうして実際にまちというフィールドに出て社会実験などを行うことで「交通まちづくり」に寄与しながら、地域と連携した研究の在り方を確立していったのである。 渋滞対策への新たなアプローチ、TDM施策への取り組み もう一つ、このころに手がけていたプロジェクトが、豊田市における「交通需要マネジメント(TDM/Transportation Demand Management)施策」への取り組みだ。具体的には、自動車の効率的な利用や公共交通への利用転換を図るという交通行動の変容を構造的方略により促し、地域の交通量の抑制や集中の緩和など、交通需要を調整することで道路交通渋滞などの問題解決を行うことを指す。  豊田市ではTDM施策を平成5年(1993)にスタートして以降、四半世紀近くにわたってそれに取り組むことになるが、ここではまず、その施策開始までの背景から振り返ってみたい。 豊田都市交通研究所のある豊田市は、1950年代以降、トヨタ自動車とその関連企業の急速な成長とともに歴史を築いてきた。日本のものづくりを支えてきた一大地域とも言える。しかし、公共交通の利便性に富んでおらず自動車移動に依存しがちな豊田市の周辺に、自動車産業の発展とともに大事業所や工場、さらにその従業員ら住居地域が次々と開発されたことで、慢性的に交

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