1章 黎明期 1991-1994( 平成3年 〜6年 )39三つの「理念」と「役割」 新研究所の基本財源は20・7億円で、豊田市が15億円、トヨタ自動車が4・5億円、安田海上火災が1・2億円を出捐。研究所として「何をやるべきか」、「どういった姿勢で臨むべきか」を各方面の関係者らと協議したうえで、理念と役割として大きく次の三つを掲げた。 一つ目は、「都市交通」を「広義」にとらえて研究に取り組むということである。広義という言葉には、都市交通を単に交通分野としてだけでなく地域振興や土地開発なども含めてとらえ、学際的な研究を通じて「安全」で「快適」かつ「円滑」な計画を提案するという意味が込められていた。さらに「人」と「自動車」だけでなく、自転車や公共輸送機関にまで幅を広げた「交通環境」をイメージした研究を遂行するとした。 二つ目は、「交通モデル都市化」の推進である。今後、さらなる発展が期待される豊田市を、世界に先駆けた交通モデル都市として整備することは研究所の命題の一つであったが、それには社会実験が必須だと考えられた。しかし社会実験は、市民の合意はもちろん、行政や民間企業の協力がなくてはできず、難題が多いのが実情であった。だが、豊田市と民間企業の協力により設立された研究所の特長を最大限に活かすことで、「交通モデル都市化」に向けた強い推進力をもつ研究がめざされた。
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